16年4‐6月期のICT経済は前年同期比0.01%増

2016年09月26日 09:29

 情報通信総合研究所は、情報通信(ICT)産業が日本経済に与える影響を把握するために、その2016年4-6月期の経済概況についてとりまとめ、発表した。

 それによると、2016年4‐6月期のICT経済は、前年同期比0.01%増とわずかにプラス成長となった(前期比で0.7%増)。ICT財生産は3期連続のマイナスと低迷しているが、ICTサービスの好調が続いていることが下支えとなっているという。ICTサービスのプラス要因としては、移動電気通信業が引き続き堅調な上、情報サービス業の復調が大きい。国内企業のセキュリティ対応サービスの導入から社内システムのクラウド化までICTサービスの利活用が活発化しているためであるとしている。

 また、ICT財生産のマイナスは今期で3期連続となった。財別にみると、前期に引き続き電子部品と集積回路の減少が要因だ。需要面から確認すると、これまで好調であったICT設備投資の電子計算機が今期大幅減になった。業種別では、これまで牽引してきた金融・保険業や情報サービス業が減少に転じている。通信機と半導体製造装置の減少も続いている。通信機は、通信キャリアの設備投資の一巡や投資効率化が背景ある。半導体製造装置の減少は、スマートフォン向けの投資が一巡していることが要因であると考えられるとしている。

 また、来期以降について、ICT経済がプラスを持続するためにはまずサービス面で情報サービス業が好調を持続することが必要だという。企業の情報サービスに対する利活用の勢いが維持されるか。そのためには、需要面でセキュリティ対応投資等課題解決投資に加え、システム更新や新規投資の継続が鍵になるだろう。ただ、海外経済の不透明感を背景にした企業マインドの悪化が社内システムの更改やそれに伴う設備投資を抑制させる可能性については注意が必要だとしている。

 ICT財生産については、iPhone7の発売が公表されたがスマートフォン需要がこれまでと同じように拡大することが期待できない中、スマートフォンに変わる新たな機器が出てきていない。その中でIoT向けが新たな牽引役として期待されているものの、本格的な成長にはしばらく時間がかかり、結果、ICT財生産はしばらく低迷する可能性が高いとしている。

 一方で、半導体製造装置は、3次元技術を採用した次世代半導体の伸びが予想されるため底入れに期待がかかる。実際、半導体は高性能サーバーへの搭載により受注増が見込まれている上、足元の生産は前年比で増加している。また、通信機械に関しては2020年の東京オリンピックに向けた動きや訪日外国人の増大に伴うホテルの客室増、また都市部における老朽化したオフィスビルの建替えに伴う新たなオフィス需要に対応する動きがみられるという。例えば、通信機械のボタン電話装置の生産の増加である。ホテル建設やオフィスの移転、増設等に伴い、ボタン電話の需要が増え、通信機の生産増加をもたらすとみられている。2020年に向けて、今後このような公共施設、オフィス施設、宿泊施設等の動きはICT財生産のプラス要因としてその動向が注目されるとしている。(編集担当:慶尾六郎)