日本でさらに販売拡大を狙うアップルに対して規制当局も警戒している。iPhoneは仕入れ価格が高く、利益率が低いぶん販売奨励金という名目で利益の補てんがなされている。このことが一因となって、販売奨励金の原資となる通信料が高止まりしている。
9月に発売となったアップルの新機種「Apple Watch Series 2」と「iPhone 7」「iPhone 7 Plus」では、日本向け対応が大幅に強化された。iOS向けの新作ゲーム「SUPER MARIO RUN」やApple Watchの「Pokemon GO」への対応、iPhone 7/7 Plusが日本でニーズの高いIP67の耐水・防塵仕様になるなど、日本をターゲットとした戦略が色濃く表れるかたちとなった。中でも、特にユーザーを驚かせたのはiOS製品へのFeliCa搭載、そして日本でのApple Payの提供開始だ。非接触のモバイル決済サービスであるApple Payは、リーダーとの通信にNFC-A/B方式を採用しており、この方式のリーダーが普及していない日本では提供が難しいとされてきた。しかしながらアップルは今回、Apple Watch Series 2、iPhone 7/7 Plusにおいて、日本向けモデル限定仕様としてFeliCaを搭載しSuicaによる交通決済やQUICPay、iDを用いたクレジット決済に対応。Apple Payの導入を推し進めてきた。
日本でのiPhoneのシェアは従来より諸外国に比べて高く、既に過半数を獲得しているが、おサイフケータイ機能のためのみに別の端末を持つ「2台持ち」のユーザーも今回のApple Payの使い勝手次第では一本化もあり得る。日本でさらに販売拡大を狙うアップルに対して規制当局も警戒している。iPhoneは仕入れ価格が高く、利益率が低いぶん販売奨励金という名目で利益の補てんがなされている。このことが一因となって、販売奨励金の原資となる通信料が高止まりしている。また、アップルは下取りした端末の国内流通を禁じており、中古端末の流通を妨げることや、携帯電話大手3社が端末の割賦契約の総額を固定する行為を、規制当局が「独占禁止法上問題となり得る行為」として見直しを求めている。
さらには経済産業省もスマホアプリの流通について実質2強になっていることから「競争相手を排除する市場支配力を持ちえる」として、アップル及びグーグルに対して名指しで懸念を示している。通信料や中古端末の流通に関して、実質アップルの契約が3社を縛っているが、経産省は取引実態が独占禁止法等の法令違反にあたるかは一概に結論付けることはできないとしている。アップルの市場支配力が今後さらに増すことも予想されるが、携帯大手3社と規制当局、経済産業省がどのように反応するか、その行方を見守りたい。(編集担当:久保田雄城)