博報堂が会話AI開発を目的として設立した100%子会社Spontenaは、6月27日、同社クライアント向けに、LINE公式アカウント上での会話AIの提供を開始した。この会話AIではメッセンジャーアプリ、Webサービス、IoTデバイスなどとインターネット経由で連携して、ユーザーからメッセージに自動応答するアプリケーションの開発が可能になる。メイン機能としては、荷物状況の確認や届け日時や場所の変更など、荷物問い合わせに関する一連のフローをLINE上のやりとりで完結するというもの。ユーザーはアプリ上でオペレーターとやりとりするような感覚で荷物状況を確認できる。このサービスはリリース後も更なる機能拡充を続けていくとのこと。
会話AIやチャットボット、音声アシスタントにはIT企業大手が軒並み力を入れている分野だ。米フェイスブックの「M」「メッセンジャー」や、米グーグルの「グーグルアシスタント」、米アマゾンの「アレクサ」や米アップルの「シリ」、米マイクロソフトの「コルタナ」「テイ」など、既に完成度の高いやり取りが可能で、パーソナルアシスタントから接客オペレーターなど幅広い用途で実装されていくと考えられる。AIと機械学習に特化した調査会社テックエマージェンスによれば、AI関連企業の幹部35人を対象に調査を実施した結果、一般消費者向けのAIで、最も重要なものは「音声アシスタントとチャットボット」という回答が37%だった。これは2番目に多かった回答「スマートオブジェクト/環境」の20%と比べてもより多くのAI関係者がその重要性を認識しているといえる。
今後5年間で電話予約センターやコールセンター、接客オペレーターなどの業種の大きな部分がチャットボットや音声アシスタントに置き換わることが予測できる。そのときに実装されるAIはやはり精度の高いものが選ばれると考えると、AI後進国と言われる日本の企業は、IT企業の巨人と勝負できないだろう。しかしローカライズされた環境では必ずしも大手IT企業のチャットボット・音声アシスタントが選ばれるとは限らない。日本のチャットサービスで大きなシェアを持つLINEは、こうしたAI市場を見越して早い段階でAPIを開放し、LINEビジネスコネクトというかたちでビジネス活用できるようにした。今回Spontenaがいちはやくこれを活用し、実用的な会話AIのサービスをリリースしたことは、日本の荷物状況問い合わせサービスにおいて、会話AI実装で先手を打ったかたちになる。(編集担当:久保田雄城)