テスラ&日産が搭載した自動運転「レベル2」は未だ発展途上。国交省、やっと規準づくりに

2016年09月03日 10:05

Nissan’s new Serena ProPILOT technology makes autonomous drive

8月24日、日産は、ミニバンのセレナに自動運転“レベル2”の「Pro Pilot」を搭載したモデルを発売した。高速道路単一車線で「追従、自動ブレーキ」などの制御を行なうが、一部では、「安全運行支援システムでしかない。“自動運転”と呼ぶことで、消費者やドライバーに誤解を与える。“自動”という呼称を改めるべき」との強い指摘もある

 国土交通省が「自動運転の国際基準作りに乗り出す」とのニュースが流れた。8月28日のことだ。その数日前の24日、日産自動車は高速道路単一車線における自動運転システム「Pro Pilot」搭載車「セレナ」を発売している。

 自動運転は日米欧の自動車メーカーやグーグルやアップルなどのIT企業を巻き込んだ開発競争が激化している。ただ、自動運転についての規制基準は整備できていない。国交省は、日本の技術を背景とする自動運転基準を世界の標準にすることで、国際競争力を高めたい考えだ。

 今年5月24日、すでに国交省は、自動運転の国際基準化にオールジャパンで対応するため、官民からなる連携組織「自動運転基準化研究所(事務局:自動車基準認証国際化研究センター/JASIC)」を設立。この研究所の取り組みにより、日本の自動運転技術を国際標準化とすることを狙うとしていた。

 背景には、自動運転技術の開発・実用化を促進するとともに、日本の自動車メーカーや部品メーカーが自動運転分野において国際競争力を確保するためには、官民一体となって国際基準化等の議論を主導する必要があると判断したからだ。そのため、必要なデータを準備し十分に戦略を練ったうえで国際的な議論に臨めるよう、自動運転基準化研究所を設立した。なお、同研究所の設立は、今年3月にとりまとめた「自動走行ビジネス検討会(国交省・経産省共催)」の報告を踏まえたものだ。

 これまでのところ自動運転は、富士重の「アイサイト」などのような自動ブレーキなどの「レベル1」から、人が運転に関与しない「レベル4」まで難易度に応じて4段階に分類される。今回策定する基準は、アクセル、ハンドル、ブレーキを同時に自動操作する「レベル2」対応の規準で、テスラの「Auto Pilot」、日産の「Pro Pilot」もこれに該当する。国連の専門家会議が策定の議論を進めており、2018年にも確定する見通しだ。

 国交省は、日本自動車工業会などと連携して基準の「日本案」を策定し、国連の議論を主導したい考え。17年度予算の概算要求で、自動運転の関連予算として3億4100万円を要求する。自動運転に関する基礎データの収集・分析や海外メーカーなどの開発状況を把握したうえで、国際基準の日本案づくりを進める考えだ。

 レベル2に相当する技術は、前記したようにすでに実用化されており、米テスラや日本の日産が発売している。ただ、普及には安全などに関する統一基準が不可欠だ。

 一方でテスラや日産のシステムは、日米の消費者団体や自動車評論家などから「単なる運転者への安全運行支援システムでしかない。“自動運転”と呼ぶことで、消費者やドライバーに誤解を与える。“自動”という呼称を改めるべき」との強い指摘もある。

 こうしたなかで、日本を含めたドイツ、米国などの自動車製造先進国が基準策定の議論を進めているのが現状だ。主要な自動車生産国で基準が分かれれば開発費の膨張などを招くため、G7などで国際基準の策定で協調する方向で議論を深めている。

 政府は2020年をめどに、高速道路で車線変更や追い越しを伴った“レベル2”の自動運転を実用化させたいとしており、日産自動車が2018年に複数レーンでの自動運転を実現、2020年までに、交差点を含む一般道での自動運転技術を投入予定だとしている。国内のトヨタや富士重なども同様の動きをみせ、トラック業界で自動コンボイ走行の運用で協働の動きが現実化している。(編集担当:吉田恒)