安価な労働力の確保を目的に積極的な中国進出を図ってきた日本企業だが、近年は日中間の政治リスクや中国国内の景気減速、人件費の高騰などの「チャイナリスク」が意識されてきた。そのようななか、各社の中国への進出、撤退といった判断が引き続き注目されている。
帝国データバンクは、自社データベース・信用調査報告書ファイル「CCR」(約 170 万社)をもとに抽出した企画商品「ATTACK データ(海外進出企業)」のなかから、中国への進出が判明した日本企業について、都道府県別・業種別・年商規模別に分析を行った。
まず、中国に進出している日本企業は、2016年8月末時点で1万3,934社あることが判明。前回調査(1万3,256社、2015年6月)に比べて678社増加した。 都道府県別に見ると、「東京都」4,743社(構成比34.0%)で最多となり、全体の約3分の1を占めた。2位は「大阪府」(2,096社、同15.0%)、3位は「愛知県」(1,103社、同7.9%)となり、上位3都府県で全体の過半数(7,942社、同 57.0%)を占めた。以下、4位は「神奈川県」(651社、同4.7%)、5位は「兵庫県」(496社、同3.6%)と続き、上位 11位までの都府県については前回調査(2015年6月)と順位の変動がなかった。 また、34都道府県で進出企業数が増加し、横ばい・減少となった13県を大きく上回ったとしている。
業種別に見ると、最も多かったのは「製造業」の5,853社(構成比42.0%)。以下、「卸売業」の4,633社(同33.2%)、「サービス業」の1,705社(同12.2%)と続き、上位3業種で1万2,191社となり、全体の87.5%を占めた。一方、前回調査(2015年6月)と比較すると、「製造業」と「卸売業」の構成比は減少し、代わって「小売業」(503社、構成比3.6%)や「サービス業」(1,705社、同12.2%)などが構成比で上昇した。上位4業種(製造業・卸売業・サービス業・小売業)を業種細分類別に見ると、「製造業」では「工業用プラスチック製品製造業」(197社、構成比3.4%)がトップ。「卸売業」では「電気機械器具卸売業」(586社、同12.6%)が最も多かった。また、両業種とも自動車関連業種が上位を占めたほか、「卸売業」では「婦人・子供服卸売業」(221社、同4.8%)や「男子服卸売業」(109社、同2.4%)などアパレル関連業種も目立った。
一方、「サービス業」では「受託開発ソフトウェア業」(417社、同24.5%)がトップ。3位となる「パッケージソフトウェア業」(105社、同6.2%)と合わせ、IT 関連産業がサービス業全体の約3割を占めた。また、7業種中最も構成比が高まった「小売業」では「婦人・子供服小売業」(52社、同10.3%)が最も多く、以下「各種商品通信販売業」(33社、同6.6%)、「中華料理店、その他東洋料理店」(28社、同5.6%)が続いた。成長する中国国内の外食市場を取り込むため飲食店経営業者が多数進出しているほか、「越境 EC」などの消費市場を背景に通信販売業者などが上位を占めている。
調査の結果、中国経済の減速や外交摩擦といった諸問題はあるものの、反日感情の高まりなどは比較的落ち着きを見せたことが影響したとしている。(編集担当:慶尾六郎)