2016年10月23日、MotoGP第16戦オーストラリアGPの決勝レースが行われた。レースの舞台となるフィリップアイランドサーキットは1周4,445m。高速コーナーが連続し、抜きどころの多いこのサーキットではエンジン全開のバトルが繰り広げられる。また、フィリップアイランドサーキットは、海に面した美しい景観が魅力のサーキットだが、風の影響を受けやすい上、1日の温度差が激しく天候も変わりやすいため攻略の難しいサーキットでもある。
予選で一番時計を出しポールポジションを得たのは、前回の日本GPで3度目の年間チャンピオンに輝いたマルク・マルケス(レプソルホンダ)。2番グリッドにはカル・クラッチロー(LCRホンダ)、3番グリッドにはポル・エスパルガロ(モンスターヤマハテック3)。ポイントランキング2位のバレンティーノ・ロッシ(モビスターヤマハMotoGP)は5列目の15番グリッドから、ランキング3位のホルヘ・ロレンソ(モビスターヤマハMotoGP)は4列目の12番グリッドからと予選ではやや出遅れる形となった。
気温12℃、路面温度33℃で始まった決勝レース、抜群のスタートでホールショットを決めたのは3番グリッドスタートのP・エスパルガロだった。ポールポジションスタートのM・マルケスはスタートではやや出遅れたものの、すぐに巻き返してP・エスパルガロをパスし、トップを奪還した。
レース序盤は混戦となったが、そんな中で着々と順位を上げたのが15番グリッドからスタートしたV・ロッシ。6周目にファステストラップを叩き出し、7周目には5番手、8周目には4番手まで浮上した。また、12番グリッドスタートのJ・ロレンソもポジションを上げ、7番手争いを演じた。
さらに2番グリッドスタートのC・クラッチローも好調で、スタートではやや出遅れたものの、4周目には2番手まで順位を戻した。9周目にはファステストラップを出し、先頭を行くM・マルケスを追いかけ始めた。
一方、トップを行くM・マルケスは序盤から快調に飛ばし、一人旅の状況に持ち込む構えだった。だが、その矢先の10周目、4コーナーでスリップして転倒。マシンが大破し今季初のリタイアを余儀なくされた。この転倒で、C・クラッチローが先頭、2番手にV・ロッシの体制となった。
トップに立ったC・クラッチローは安定した走りで、2番手のV・ロッシを徐々に離し、レース中盤では4秒以上のアドバンテージを築き独走状態となった。
C・クラッチローが逃げを打つ一方で、激化したのが表彰台をめぐるアレイシ・エスパルガロ(チームスズキエクスター)、アンドレア・ドビツィオーゾ(ドゥカティ)、マーベリック・ビニャーレス(チームスズキエクスター)の三つ巴の戦いだった。ストレートで速さを誇るドゥカティに対し、スズキはインフィールドセクションで速さを見せ、ポジションが目まぐるしく変化した。
特にA・エスパルガロとM・ビニャーレスのチームメイトバトルは熾烈だったのだが、残り5周、23周目にA・エスパルガロがスリップして転倒、3番手争いから脱落した。初の表彰台獲得を逃してしまった。
トップを走るC・クラッチローは最終周にペースを落としたものの、安定したミスのない走りで今季2勝目を獲得。V・ロッシもレース後半は伸びを欠いたが、15番グリッドからジャンプアップして2位でフィニッシュした。3位はM・ビニャーレス、4位はA・ドビツィオーゾ、一時トップに立ったP・エスパルガロは5位、12番グリッドスタートのJ・ロレンソが6位だった。
これによってV・ロッシは20ポイントを獲得し、総合216ポイント。ポイントランキング3位のJ・ロレンソは10ポイント加算し、総合192ポイントとなり、V・ロッシのアドバンテージは24ポイントに広がった。
また、優勝したC・クラッチローは25ポイントを獲得し、総合141ポイント。A・ドビツィオーゾを抜き、ポイントランキング6位に浮上した。
V・ロッシとJ・ロレンソのランキング2位争いの行方はもちろん、今季後半戦絶好調のC・クラッチローの活躍や、スズキのチームメイトバトルも面白くなってきた。いよいよ終盤戦を迎えたMotoGP。既にチャンピオンは決定しているものの、まだまだ随所でバトルは繰り広げられている。
3週連続、環太平洋3連戦の最終戦マレーシアGP決勝は10月30日、クアラルンプール郊外のセパン・インターナショナル・サーキットで行われる。高温多湿で最も過酷なサーキットとも言われるセパンでどんなレースが繰り広げられるのか、今から楽しみだ。(編集担当:熊谷けい)