2016年10月16日、MotoGP第15戦日本GPの決勝が行われた。レースの舞台となるツインリンクもてぎは全長4,801mのストップ&ゴーが特徴的なサーキット。抜きどころが多く熾烈なバトルが期待できるコースである。
日本GPは毎年シーズンの終盤に行われるため、チャンピオンシップに大きく関わるレースとなることが多い。今季の日本GPもポイントリーダーのマルク・マルケス(レプソルホンダ)が優勝かつランキング2位のバレンティーノ・ロッシ(モビスターヤマハMotoGP)が15位以下、3位のホルヘ・ロレンソ(モビスターヤマハMotoGP)が4位以下の場合、M・マルケスのワールドチャンピオンが決定する、という状況でグランプリを迎えた。
前日に行われた予選の結果、V・ロッシがポールポジションを獲得。2番手にチャンピオンに王手をかけたM・マルケス、3番手にはJ・ロレンソとフロントローにチャンピオンシップを争う3選手が並び、まさに三つ巴の戦いとなった。
気温25℃、路面温度36℃のドライコンディションで迎えた決勝、抜群のスタートでホールショットを決めたのは2番グリッドからスタートしたM・マルケスだった。だが、2コーナーで3番グリッドスタートのJ・ロレンソがトップを奪取。ポールポジションからスタートしたV・ロッシはスタートでは先を許したものの、その後はM・マルケスに追い縋り、序盤から熾烈なドッグファイトとなった。
テールトゥノーズのバトルの中、4周目にはM・マルケスがJ・ロレンソを捕らえてトップに立ち、V・ロッシも6周目にJ・ロレンソを抜いて2番手に浮上した。
だが、その矢先7周目にV・ロッシがまさかの単独転倒。マシンをピットに戻したもののリタイアを余儀なくされ、ノーポイントでレースを終えてしまった。V・ロッシのリタイアによって、J・ロレンソが2番手、アンドレア・ドビツィオーゾ(ドゥカティ)が3番手に浮上した。
V・ロッシの転倒後、トップを走るM・マルケスが独走状態で危なげなくレースを引っ張る一方、熾烈なバトルとなったのが4番手を争うチームスズキエクスターのチームメイトバトルだった。レース序盤から先行したのはアレイシ・エスパルガロだったが、ルーキーのマーベリック・ビニャーレスはこれに離されることなくついて行き、19周目にはA・エスパルガロの前に出た。
レースが終盤に差し掛かってもM・マルケスの独走状態は変わらず。だがM・マルケスが優勝しても、2位にJ・ロレンソが入れば年間チャンピオンの行方は次戦以降に持ち越される。その公算が大きくなった矢先の20周目(残り5周)、まさかのアクシデントが待ち構えていた。2番手走行中のJ・ロレンソが転倒、コースアウトを喫しリタイアしてしまったのだ。
モビスターヤマハの2選手はフィジカルの不安を抱えての参戦だった。V・ロッシは風邪で体調を崩しており、J・ロレンソは転倒による打撲傷を負っていた。そのためレース前から多少不安を指摘する声はあったが、二人が共に転倒リタイアするという結果は予想だにしえないものだった。
この2選手のリタイアにより、トップを行くM・マルケスが優勝すれば、残り3戦で逆転の可能性が潰えチャンピオン決定となる。
レースはその後大きな波乱はなく、M・マルケスは最後の数周はペースを落としたが、始終安定した走りを見せ、最後はマシン上に立ち上がってキックをしながらチェッカーを切り、チャンピオンを獲得。2位はA・ドビツィオーゾ、3位はM・ビニャーレスだった。
また、ワイルドカード参戦の中須賀克行は11位、けがによって欠場したダニ・ペドロサ(レプソルホンダ)の代役として参戦した青山博一は15位でフィニッシュし、ポイントを獲得している。
M・マルケスは2年前の2014年シーズンも日本GPで年間チャンピオンを決めているが、その際のレース結果は2位。ホンダのホームサーキットであるもてぎでの優勝による年間チャンピオン決定にM・マルケスおよびチームクルーは喜びを爆発させた。
日本GPでチャンピオンが決定した今季のMotoGPだが、まだ3戦を残している。ポイントランキング2位のV・ロッシと3位のJ・ロレンソのポイント差は14ポイントとまだまだ僅差。残り3戦で2位と3位がひっくり返る可能性も十分にあり、まだまだ目は離せない。また、今回の日本GPではドゥカティ、スズキが上位に食い込んでおり、来季以降の情勢を占う意味でも残り3戦は見逃せない。
次戦のオーストラリアGPの決勝は10月23日。フィリップアイランド・サーキットで開催される。(編集担当:熊谷けい)