テレインホテル事件と駆けつけ警護 国会議論を

2016年10月29日 10:50

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日本のPKO隊が駆けつけ警護の任務を担っていたとすればどうだっただろう。

 稲田朋美防衛大臣が10月28日行った記者会見で「駆けつけ警護」をどう判断すべきか、判断の難しいであろうことだけが筆者の中で課題に残った。

 この日の会見で、記者団から、今年7月のジュバ混乱時、UNMISSが中国軍とエチオピア軍に対し、民間人、外国人、国際NGO関係の人たちが襲われていると『駆け付け警護』を要請した時、中国もエチオピアも行かなかったことをあげ、国際NGOのヒューマン・ライツ・ウォッチやアムネスティが批判しているが、どう考えるかと大臣に考えを求めた。

 稲田大臣は「指摘の事案はテレインホテルの事件ではないかと思います。報道によれば、事件は武力衝突の最中に発生し、統制の乱れた80名から100名の政府軍兵士による人道関係者等への襲撃事案と思う」と語った。

 事件を報じる各種報道からは、地元ジャーナリストが殺害され、女性は性的集団暴行を受けた。外国人女性、特にアメリカ人女性は夜の間、繰り返し暴行されたという報道もある。そして、この事件発生直後からホテルの外部に対し、救出を求めるメールなどが継続発信されていたという。しかし、駆けつけ警護をしなかった。

 日本のPKO隊が駆けつけ警護の任務を担っていたとすればどうだっただろう。女性が集団暴行されている状況を黙殺しただろうか。日本人の「人としての生き方」「美学」に反する気がする。救出せず帰国すれば、生涯、精神的負担や自己嫌悪に襲われそうな気がしてならない。

 稲田防衛大臣は「UNMISSの歩兵部隊ですら対応できない事案であったということだと思う。最終的にUNMISSから連絡を受けた南スーダン政府軍の治安部隊により、収拾が図られた。この事案については、今、国連事務総長の下で特別な調査が行われているというふうに承知している」と答えた。

 そして、11月に派遣するPKO活動部隊に『駆けつけ警護』という新任務を付与する場合にも「テレインホテルのような大規模な襲撃事案、まさしく国連の歩兵部隊すら対応できないような事態において、わが国の施設部隊が『駆け付け警護』できるような状況ではないというふうに考えております」と結論づけた。

 発生事件の規模による大小の問題なのか、そうではない。人道上、すべきことがあるのではないか。目の前でSOSを受信しながら、救わないで良いのか。一方で、非情、冷徹、ガイドラインに則した判断しかないようにも思われる。

 しかし、集団による犯罪行為が政府軍の中のメンバーによるものであれ、反政府軍のメンバーであれ、PKO参加隊のメンバーであれ、対応し、犯罪行為に対しては厳格に対処すべきではないのか。

 人としてすべきことの判断、国家としてすべきことの判断、その難しさだけが強く浮き彫りになった。そして重くのしかかっている。この問題は、このような具体的事件を題材に、国会で与野党、真剣に議論してほしい。

 現場の自衛隊員は、まさに、こうした問題に直面し、ストレスだけを抱え帰国することにもなりかねない。生涯、罪悪感を背負うことにもなりかねない。与野党問わず、国会議員、政府の責任は重い。ギリギリまで、どうあるべきか国会で議論してほしい。(編集担当:森高龍二)