トヨタ自動車が中国市場に向けた戦略を強化する。同社は、中国の研究開発拠点であるTMEC(Toyota Motor Engineering &Manufacturing China Co., Ltd./トヨタ自動車研究開発センター中国)において、設立時の投資計画に基づき、既存実験棟の増強、新実験棟の建設、電池評価試験棟の新設およびテストコースの増強を行なうと公表した。完成予定は2018年末以降としている。
TMECは、2010年に「中国のためのクルマづくり」に向け、開発体制の現地化と強化を目的に設立された施設・機関だ。それ以降、中国産ハイブリッドユニット搭載車の中国市場への普及を目指し、取り組みを推進してきた。
2012年には主要ハイブリッドユニットの現地生産会社として「トヨタ自動車(常熟)部品有限会社」(ハイブリッド用トランスアクスルの製造会社)、また、2013年には「新中源トヨタエナジーシステム有限公司」(ハイブリッド用電池製造会社)を設立。2015年10月、中国現地生産ハイブリッドユニット搭載の「カローラ・ハイブリッド」「レビン・ハイブリッド」の販売を開始している。
トヨタは、従来からハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、電気自動車、燃料電池車と、それぞれの特徴を活かしながら、全方位でエコカーの開発を進めてきた。中国においても、中国政府の「省エネ・新エネ車発展企画」のもと、“環境に優しいクルマ”を導入していく計画だ。
現在取り組みを進めているハイブリッド車の普及に加え、「カローラ」「レビン」のプラグインハイブリッド車の導入を予定している。また、燃料電池車の中国での実証実験開始に向けた準備を推進する。
同時に中国市場への電気自動車導入についても検討していく。中国市場の競争激化、および法規制の厳格化が進む中、中国における開発拠点であるTMECの施設を拡張し、技術開発機能を強化することで、中国におけるクルマづくりを推進する。
トヨタの中国戦略強化は、中国が自動車の環境規制強化に乗り出すことを受けてのもの。中国では2017年から大都市で、「国六」と呼ぶ最新の排ガス規制を始める。これは、欧州で2015年から本格導入した世界で最も厳しい「ユーロ6」に相当する環境基準だ。欧州と同等の厳しい排ガス規制を前倒し導入。加えて、2020年前後に「米ZEV規制」と同規準の完全無公害車の販売義務付けもスタートさせる。同時に燃費基準も20年までに先進国並みに引き上げる。一連の対策で自動車の排ガスに含まれる環境汚染物質を現行規制比で平均約5割削減し、PM2.5などの深刻な大気汚染の抑制につなげたい考えだ。
昨年、中国の新車販売台数は2459万台で、7年連続で世界最多。米国の1.4倍、日本の5倍規模と急増している。だが現行の「国四」と呼ばれる排ガス規制は欧州などが2009年まで使っていた古い基準。環境を保護する制度が追いついていないとの指摘が多かった。
中国の自動車業界では「新しい排ガス規制を課すと、技術力のない中国メーカーの半分は倒産する」とも言われ強い警戒感を持つ。日米欧の自動車大手は先進国市場で実績のある環境技術を対応できる。が、中国企業はそうは行かないのが実情だ。そのため、中国側が外資メーカーに最新技術の現地移転を強く迫って着る可能性もある。
トヨタの今回の発表は、こうした動きを受けて長期的な視点から中国での研究開発強化に力を入れるということだ。今後は現地エンジニアを育成し、中国の新しいニーズに応えるクルマの開発を目指す。(編集担当:吉田恒)