2015年9月に許可制の「労働者派遣事業」として一本化した改正労働者派遣法が施行されて1年が経過した。製造業やサービス業など、慢性的な人手不足を背景に、派遣労働者の需要は旺盛で、労働者派遣事業には追い風が吹いている。
東京商工リサーチによると、2016年1-10月の「労働者派遣業」の倒産は54件に達し、前年同期を上回った。原因別では「販売不振」が最多の35件(前年同期比9.3%増)で、全体の6割(構成比64.8%)を占めた。同業他社との競争に加え、規模間での賃金格差が拡大し派遣労働者の確保自体が難しく、小規模事業者ほど厳しい経営に追い込まれるなど、業界を取り巻く環境の側面を浮き彫りにした。
企業倒産は、バブル期並みの低水準で推移しているが、2016年1-10月累計の「労働者派遣業」倒産件数は54件(前年同期比8.0%増、前年同期50件)に達した。このペースで推移すると、年間(1-12月)ベースで、2013年(88件)以来3年ぶりに前年を上回る可能性が出てきたという。
負債総額も38億200万円(前年同期比8.2%増、前年同期35億1,300万円)で、前年同期を上回っている。ただ、負債10億円以上の大型倒産は発生がなく(前年同期ゼロ)、1件当たりの平均負債額は前年同期と同水準の7,000万円にとどまり、小規模企業の倒産が際立っている。
2016年1-10月の「労働者派遣業」倒産の原因別では、「販売不振」が最多の35件(前年同期比9.3%増、前年同期32件)で6割(構成比64.8%)を占めた。次いで、「他社倒産の余波」が8件(前年同期比14.2%増、前年同期7件)、「事業上の失敗」が6件(前年同期2件)と続く。
従業員数別では、最多は5人未満の34件(前年同期比17.0%減、前年同期41件)だったが、前年同期より減少した。ただし、5人以上10人未満は10件(同150.0%増、同4件)、10人以上20人未満は6件(同200.0%増、同2件)といずれも増加しており、従業員5人未満の零細事業者より5人以上20人未満の小規模事業者が前年同期より2.6倍増(6→16件)と増勢が目立った。
形態別では、債務超過で企業が消滅する破産が54件(前年同期比12.5%増、前年同期48件)で、倒産企業はすべて破産だった。大手の人材派遣会社からの営業攻勢を受け、業績不振から抜け出せず事業意欲を喪失し、破産に追い込まれる小規模事業者が多いことを示したという。
労働者派遣業は派遣先(企業)の技術や業務内容など、派遣先との緊密な関係が優先される。一旦、失った営業窓口の挽回は難しく、挽回には時給切り下げが必要なケースも多く、業績不振に陥った企業の再建は極めて難しいようだとしている。
資本金別では、1千万円以上5千万円未満が24件(前年同期比7.6%減、構成比44.4%)、1百万円以上5百万円未満が16件(同14.2%増、同29.6%)と続き、1億円以上は発生がなかった(前年同期1件)。1千万円未満は27件(前年同期比17.3%増、前年同期23件)と半数(構成比50.0%)を占め、資本金規模の小さい企業が目立ったとしている。(編集担当:慶尾六郎)