IoTの活用が急速に拡大するなか、日本企業におけるIoT普及率は5.0%にとどまることが、ミック研究所の調査(2016年3月)により明らかになっている。小さなデータを始終やり取りするIoTデバイスにおいては、通信料金や消費電力の面で課題があり、これらをクリアするIoT向けネットワークの展開が遅れていることがその要因のひとつと考えられる。
こうしたなか、京セラの子会社でICTや通信エンジニアリング事業などを行う京セラコミュニケーションシステム(KCCS)は11月9日、仏SIGFOXとの提携を発表。独占的なネットワークパートナーとなり、同社の提供するIoTネットワーク「SIGFOX」の日本での展開を進めていく。「SIGFOX」はIoTに特化したネットワークで、データ通信能力は約100ビット/秒と低速だが、低価格、省電力、長距離伝送が可能といった特徴がある。1年間の1回線(デバイス)当たりの通信費用は100円以内に抑えることも可能で、1回の電池交換で約5年間運用できる。外部電源が不要なため設置場所を選ばないうえ、通信モジュールについても300円程度のものから提供可能とのこと。KCCSは17年2月までに、まずは東京23区でのサービス開始を目指し基地局設置を進めていく方針。
従来の携帯電話事業者が提供する3G回線やLTE回線では、最低でも月300~500円程度のコストが発生してしまう。これに対して低価格、省電力で広域をカバーできる通信技術、LPWA(Low Power Wide Area)がIoT向けネットワークの最有力候補として登場した。「SIGFOX」もこの技術うちの1つに分類され、世界でいち早く展開を進めている。「SIGFOX」は欧米を中心に24カ国で展開されており、18年までに60カ国に増加する予定となっている。現在既に500億デバイスの情報のやりとりを行っており、カバー面積は200万平方キロメートルに達しているとのこと。ほかにもLPWAには、英ボーダフォンなど欧州系の通信事業者が「SIGFOX」にIoTビジネスを奪われることの危機感から標準化を急いでいる「NB-IoT」や、鴻海精密工業が開発し日本ではソフトバンクが連携して先行展開を進める「LoRaWAN」といったものがあり、今後はIoTビジネスでのシェアを奪い合う競争が激化することが予想される。(編集担当:久保田雄城)