矢野経済研究所では、国内民間企業のIT投資実態と今後の動向について調査を実施した。調査期間は2016年7月~10月、調査対象は国内の企業、公的団体・機関等。調査方法は民間企業、および公的団体・機関等に対する郵送アンケート、および文献調査を併用した。
国内民間企業のIT市場規模(ハード・ソフト・サービス含む)は、2015年度が前年度比2.1%増の11兆5,560億円と推計した。今後は、2016年度が前年度比0.7%減の11兆4,750億円、2017年度が前年度比0.5%減の11兆4,180億円、2018年度は前年度比 0.5%増の11兆4,750億円になると予測する。
金融業界で続いていた大掛かりなシステム更新も2016年度にはピークアウトし、落ち着きつつある。そのため、2016年度から2017年度にかけては、国内民間企業のIT市場規模は前年度比で僅かに縮小に転じると予測する。
2018年度以降については、Windows7の延長サポート終了(2020年予定)に向けた動きや、東京オリンピックに向けた新たな需要が見込まれることから、国内民間企業の IT 市場規模は上向いてくると予測する。
調査において実施をした法人アンケート調査では、今後3年間でIT投資が増加するソフトウェア(複数回答)について、尋ねている。2011年調査からの回答比率の推移をみると、2012年に「セキュリティ関連ソフトウェア」が「ERP(基幹業務統合管理)」を上回って以来5年間、「セキュリティ関連ソフトウェア」のトップが続いている。「セキュリティ関連ソフトウェア」に対する回答比率は、2016年調査では 55.0%となり、2011年調査と比較すると29.2ポイントの増加であった。
2015年は、情報漏えい問題、ゼロデイ脆弱性、ランサムウェアの増加などの情報セキュリティ問題(インシデント)が話題になった。また、IoT機器やスマートフォンなどのデバイスを悪用したDDoS攻撃の増加が今後も予想される。こうした問題への関心がセキュリティ関連への投資行動として表れたものと考える。
また、今後3年間でIT投資が増加するソフトウェアについての回答比率が 3番目に高い「SFA(営業支援システム)」は、2016年調査では19.4%で第3位と2015年調査から順位をひとつあげた。営業面において、情報の共有や有効活用に課題を感じている企業は多く、大企業やIT関係以外の企業においても、社内案件管理や情報共有のため、SFAを導入する企業が増加していると考えるとしている。(編集担当:慶尾六郎)