京都市に本社を置く半導体メーカー・ローム株式会社が、冷蔵庫などに使われる直流(DC)ファンモータ用電源に最適な降圧DC/DC コンバータ「BD9227F」を開発し、話題になっている。
DCファンモータは、直流電圧で駆動するモータで羽根を回転させ、機器の内部で発生した熱を外部へ排出し、内部を冷却するもので、冷気循環の用途で、家電製品からOA機器に至るまで幅広く搭載されている。
今回、ロームが開発した電源ICが注目されているのは、従来の電源システム上の問題点を大幅に改善できる点にある。これまで、DCファンモータの電源部はディスクリート部品で構成されることが主流だった。それゆえ、高精度制御が難しい上に高周波駆動ができず、周辺部品に大きなコイルと出力コンデンサが必要となるため、占有面積も大きくなるという宿命的な課題があった。しかし、今回、ロームが開発に成功したこの電源ICを用いると、高精度制御が容易になる上、ICのアナログ回路設計技術による 1MHz の高周波駆動と回路最適化まで可能となる。近年、電子部品は小型化、高効率への需要が高まっているが、この製品を使用することで部品占有面積を従来構成比で約75%削減すると同時に、電力変換効率もおよそ19%も向上(出力電流 300mA 時)できるのだという。
一般的には「たかがファンモータ」と思ってしまうかもしれないが、世界の電力需要の実に50%以上がモータ駆動に使用されているという事実を知れば、侮れないことが分かっていただけるのではないだろうか。しかも、モータの回転数をきめ細かく制御することで得られる省エネ効果は甚大で、電力量は回転数の3乗に比例して増えるといわれている。つまり、高精度制御で回転数を80%に削減できるだけで、使用電力量は従来品のほぼ半分にまで節約できるのだ。
これはもちろん、一般家庭の家計にも大きく影響してくる。例えば、エアコンの電気代は現在、年間約16000円~50000円、冷蔵庫の電気代は年間約8400円~10000円に上るといわれている。これらの家電にはファンモータが搭載されているため、電源システムがIC化されて高精度制御されるようになると、大幅な省エネ、節電効果を生むだろう。とくに冷蔵庫などは24時間、年中無休で駆動しているため、その効果はより大きいであろう。また、システムが小型化されることで、同じ大きさでも収納容量を増やすことや、他機能の搭載、製品自体の小型化なども可能である。
インバータ制御によるモータの省エネ化は、これまでにも行われてきたがDCファンモータの電源部をIC化することによる高効率化は業界初となる。これを機にモータの省エネ化、小型化が加速するのではないだろうか。(編集担当:石井絢子)