送電網使用料に廃炉費なら安倍政権の大失策に

2016年09月24日 08:48

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「原発の廃炉費用」。原発と何のかかわりもない『新電力』にまで負担させるような制度設計を政府に許してはならない

 「原発の廃炉費用」。原発と何のかかわりもない『新電力』にまで負担させるような制度設計を政府に許してはならない。

 原発に依存しない社会をめざし、原発事業者の電力会社から新電力に乗り換えた国民まで、原発廃炉費用の一部を「電気料金を通して払わされる」ことは「電力改革の理念を損なう」(河野太郎前国務大臣)ものになる。

 地域独占企業状態で長年、多くの利益を上げてきたにもかかわらず、企業の社会的責任として廃炉費用の引き当てが少ないこと事態が問題なのだ。

 原発の廃炉費用は原発電力事業者が将来の廃炉のための費用を「引当金」として積み立て事業者自身で賄うのが原則。電力会社が原発で儲けているとき、利益は電力会社が収受し、廃炉で費用がかかるとなると国民全員で負担するような馬鹿げた制度設計が許される道理がない。

 しかし、このような制度設計を経産省は立案するかもしれない。毎日新聞や朝日新聞が今月報じた「経産省の原発廃炉費・新電力にも上乗せ案」。

 直近の朝日新聞21日付けは「来年4月の電力自由化で家庭向けにも参入する新電力。新電力を選ぶ消費者が契約数の2%ほどにとどまっている現状から増えていけば、廃炉の費用が想定通り集まらなくなる可能性がある」などとして、「送電網の使用料に廃炉費用の負担を上乗せする案がでている」と報じた。

 経産省試算では、東電管内では3人家族の標準家庭で月額180円ほど、その他のエリアでも毎月約60円の上乗せを想定しているそう。

 経産省幹部の話として「新電力に切り替えた消費者も、以前は原発で生み出された電力を利用していたから『すべての人から公平に費用を回収する必要がある』と理由」にあげているそうだ。

 全く持って理解できない発想だ。河野前国務大臣は「過去にNTTの電話を使ったことがあるからといってauやソフトバンクの利用者にDoCoMoのコストを負担させるようなもの」と見事に、経産省幹部の論理が破たんしているかを指摘する。河野前大臣は「利益は懐に入れ、廃炉費用を国民に押し付けようというのはおかしい」と断言。

 河野前大臣はこうも言う。「原発で儲けた電力会社は、当然、原発事故に関する賠償や費用を負担する必要がある。資本主義の中で、利益を出している上場企業に税を投入したり、株主、経営者、貸し手の責任が追及される前に、消費者に負担が押し付けられるようなことがあってはならない」。筆者も全く同感だ。

 経産省、そして関係閣僚、もちろん、当事者の原発事業者の電力会社は、この指摘こそ、自覚し、責任ある、そして、国民が納得のいく『制度設計』を考えよ。来年の通常国会にとんでもない電気事業法改正案を出さないよう、国民全員が注視をし続けなければならない。自由主義経済、資本主義下で、送電網使用料に廃炉費を上乗せするようなことをすれば安倍政権の大失策になるだろう。賢明な判断を期待する。(編集担当:森高龍二)