野村総合研究所(NRI)<4307>は、2015年の日本における純金融資産保有額別の世帯数と資産規模を各種統計等から推計した。また、2016年8月~9月に、全国の企業オーナー経営者を対象に「NRI富裕層アンケート調査」を実施した(有効回答2,146名、うち本人と配偶者の保有する金融資産の合計額が1億円以上の回答354名)。
預貯金、株式、債券、投資信託、一時払い生命保険や年金保険などから構成される「純金融資産保有額(保有する金融資産の合計額から負債を差し引いた値)」を基に、わが国の総世帯を5つの階層)に分類しておのおのの世帯数と資産保有額を推計した。結果は、純金融資産保有額が1億円以上5億円未満の「富裕層」、および同5億円以上の「超富裕層」を合わせると、2015年時点で121.7万世帯だった。内訳は、富裕層が114.4万世帯、超富裕層が7.3万世帯である。
2013年の世帯数と比較すると、富裕層は20.0%、超富裕層は35.2%増加し、両者を合わせると20.9%増えた。NRIが同様の方法で推計を行ってきた2000年以降、ピークであった2013年の合計世帯数100.7万世帯を、約21万世帯上回っている。
富裕層・超富裕層の世帯数増加は、2013年から2015年にかけての株価上昇により、2013年時点では純金融資産が5,000万円以上1億円未満であった準富裕層と1億円以上5億円未満であった富裕層の多くが資産を増やして、それぞれ富裕層・超富裕層に移行したことが原因と見られる。
2013年から2015年にかけて、富裕層および超富裕層の純金融資産総額は、それぞれ17.3%、2.7%増加し、合わせて12.9%増えた。2015年における富裕層および超富裕層の純金融資産総額272兆円は、NRIが推計した2000年以降のピークであった2007年の254兆円を上回っている。
富裕層および超富裕層の保有する純金融資産保有額の増加は、前述のように、安倍政権下の経済政策(いわゆるアベノミクス)による株価上昇がこの期間続いたため、もともと富裕層および超富裕層の人々の保有資産が拡大したことに加え、金融資産を運用(投資)している準富裕層の一部が富裕層に移行したためと考えられるとしている。なお、2016年に入って、円高や株価の低迷等により、富裕層・超富裕層の純金融資産額の増加は停滞していると考えられるという。
2013年から2015年にかけて富裕層・超富裕層の保有する資産が増加したことは、相続税課税強化の動きと相まって、生前贈与の活発化につながるとみられる。アンケート結果によれば、企業オーナー経営者の富裕層・超富裕層のうち、資産の生前贈与を「度々行っている」割合は22%、「度々ではないが、生前贈与をしたことがある」割合は21%、合わせて43%が生前贈与を実施している。
また、「生前贈与を実施したことはないが、関心はある」という割合は14%、同じく「やや関心がある」割合は19%であり、生前贈与の実施経験がある割合と少しでも関心がある割合を合計すると76%に達する。(編集担当:慶尾六郎)