一般的に子供を対象としている印象が強い絵本であるが、近年は大人向けや女性向けなど、様々な対象に向けて作られている。手づくり絵本や翻訳絵本などその種類も豊富であり、携帯電話などでダウンロード出来る絵本も人気があるという。こういった人気を背景に、絵本の原画展が各地で開催されているなど読み手を対象としたイベントだけでなく、作り手を対象とした絵本・童話コンテストも盛んに行われている。
絵本は本の一分野であるため、そのコンテストはやはり出版社が主催のものが多い。「子供たちが心から楽しめる作品を届けたい。読んであげながら、親子で会話が弾む作品をたくさん紹介したい」という思いから小学館が発刊する読み聞かせお話雑誌「おひさま」では、「おひさま大賞」として作品を募集している。講談社も「講談社絵本新人賞」として幼児・児童を読者対象とした、今年で第34回を迎える絵本のコンテストを実施している。
NPO法人や文化振興財団などの団体が主催する絵本・童話コンテストも数多く実施されている。こちらは「読み聞かせ」がコンセプトとして主流なようである。NPO法人キッズエキスプレス21事務局が主催する「創作童話・絵本・デジタル絵本コンテスト」は、同団体が読み聞かせ運動の一環として開催。また、社団法人生命保険協会も「読み聞かせによる”家族のきずな”推進活動」の一環として平成20年から「家族のきずな絵本コンテスト」を実施している。
さらに、出版社やNPO法人など以外の一般企業によるコンテストも近年活発化している。先日募集開始された、山田養蜂場が主催する「こどもたちのためのミツバチの童話と絵本のコンクール」は今回で14回目を迎える代表的なコンテストである。「童話や絵本を通じて子供たちが想像力を自発的に発揮して、豊かな心を育んでほしい。また、大人が子供のことを考える時間に役立ててほしい」との想いから実施されている本コンクールは、1999年より毎年開催されており、昨年までに41,730作品の応募があったという。出版社やNPO法人等の団体が主催するコンテストと異なり、はちみつをはじめとするミツバチ産品を販売する山田養蜂場らしく、ミツバチやはちみつを登場させた絵や文章がその応募規定となっている。
絵本・童話は利益率が低く、初版部数も少ない上に、絶版までの期間も短くなっているという。そのため、優れた作品に、本屋で出会う機会が少ないということは想像に難くない。そこで、様々なコンセプトで実施されているコンテストに注目してみてはいかがであろうか。様々な作品と出会うことが出来るであろう。少子化が深刻化し出版市場が縮小を続ける中、大人が買うようになったとはいえ、絵本を含む児童文学の市場も微減を続けている。自身が子供の頃に読んだ絵本や童話を子供にも与える傾向も強い。多くの読者がコンテストに注目していくことで、新たな作品が陽の目を見ることになり、市場の活性化にも繋がるのではないだろうか。