気候変動対策はビジネスと投資の領域へ COP22で見えてきたもの

2016年12月10日 21:22

IGES COP22_Report

12月、都内内幸町で開催されたCOP22での議論内容報告セミナー、写真は第2部トークセッションの模様

 公益財団法人「地球環境戦略研究機関(IGES)」が、東京都内の会場でIGES COP22報告セミナー「動き始めたパリ協定~脱炭素化に向けて、問われる日本のアクション~」と題したセミナーを開催した。

 11月7日から11月18日までモロッコのマラケシュで開催された国連気候変動枠組条約第22回締約国会議(COP22)での議論の内容をいち早く報告するセミナーだ。同時にCOP22に参加した企業などの代表者たちが、現地会場で感じたCOP22を伝えた。

 COP22の前段として、昨年のCOP21「パリ協定」を踏まえておく必要があると冒頭で述べたのは、IGES気候変動とエネルギー領域エリアリーダーの田村堅太郎氏。

 同氏によるとパリ協定が目指す目標は、大きく以下の項目だという。

 まず「地球の気温上昇を産業革命以前に比べて“2℃よりも低く”抑え、さらに“1.5℃未満”に気温上昇を抑えるために努力するための長期的気温目標を決めた」こと。そのために、「早期の温室効果ガス排出量ピークアウトを目指し、今世紀後半には実質排出ゼロを実現する」としたこと。

 また、「さまざまな気候変動の悪影響に対する適応力と耐性の強化を図り、温室効果ガスの排出を抑えるための技術の発展促進を図る」としたこと。そして、これらを「実現するため整合性のある資金フローを確立する」ことだという。

 つまり、気候変動を伴う環境改善にCOPに集結した国家だけでなく、企業など非政府団体からの投資を呼び込む方策を立てるということだ。これらを具体的に進めるため、パリ協定に基づくルールづくりのためのミーティングが先般のCOP22だったというわけだ。

 加えて、IGES 統括研究ディレクターの田中聡志氏は、COPにおいて世界をリードする各国の動向や将来的なプラットフォームの構築について言及した。

 気候変動の影響に対する適応力を世界が獲得するには、「現在の産業構造や社会システムを前提にして、“何が出来るのか?”という発想ではなく、“今世紀末までの、いかなる社会を構築すべきか”という発想で臨むという意志が、今回のCOP22で「マラケシュ・プラットフォーム」が生まれてきたという。

 セミナー後半では、マラケシュ会議に参加した企業などのメンバーが参加するトークセッションが行なわれた。

 そのなかで、COP22公式会議である「ビルディングデー」において事例発表した積水ハウスの常務執行役員 環境推進部長 兼 温暖化防止研究所長の石田建一氏が述べた内容が興味深い。

 「我々はハウスメーカーとして既に“脱炭素宣言”をしている。昨年、当社で建設した住宅の7割は、いわゆる“ゼロエネルギー住宅”であり、これまでの累計建築棟数は約23,000戸強。二酸化炭素排出を約10万トン/年削減したことになる。企業における地球温暖化対策は、完全にビジネス領域に入った」と語り、COP22は単なる環境会議ではなく環境ビジネスの展示会でもあったという。

 同様に、日本板硝子株式会社執行役員サステナビリティ部環境安全衛生部統括部長の小林史朗氏も、「脱炭素社会の構築はビジネスとして大いに活性化する。今回、COP参加は2度目だったが、“脱炭素”が実質的な政策になったため、実際的な資金面でのミーティングが非常に増えた」と述べ、さらに「民間企業が“脱炭素施策”を具体的に打ち出さないと投資家は逃げる」とも言及した。

 「こうした環境領域への民間投資という領域で日本は遅れをとった」との考えがCOP22に参加した日本から参加したメンバーの共通した認識のようだった。

 国連気候変動枠組条約締約国会議は、環境対応提言をまとめる会議から、脱炭素化へむけた取組が民間の環境ビジネスとして成立させるための投資環境を整える場所・会議になりつつあるようだ。これにより脱炭素化に向けたビジネスの動きが本格的になることを期待したい。(編集担当:吉田恒)