15年度の「一人当たり経常利益」は全産業平均で152万円 前年度から6.82%増加

2016年12月12日 08:03

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015年度の決算は、上場企業を中心に円安やインバウンド消費などを背景として増益企業が相次いだ

2015年度の決算は、上場企業を中心に円安やインバウンド消費などを背景として増益企業が相次いだ。特に大手ゼネコンは、公共工事が引き続き好調なことや都心の再開発など大規模工事が重なった影響で最高益が続出している。人口減少に直面する日本経済において生産性の向上は喫緊の課題であるが、設備投資の息切れや個人消費の低迷など継続的な成長が不安視されている一面もある。政府は、企業の生産性向上を促す様々な政策を打ち出しており、その効果が今後期待される。

 帝国データバンクでは、リーマン・ショック前の2007年度(2007年4月~08 年3月期)から 15年度(15年4月~16年3月期)までの9期間の財務分析を実施。生産性、安全性、収益性の3点から調査・分析した。

 企業の生産性を測る指標のひとつである「一人当たり経常利益」を見ると、全産業平均で152万円となり、前年度から6.82%増加した。リーマン・ショック前と比較すると、「製造業」がわずかに届かなかったものの、その他4業種で 2007 年度を上回った。特に「運輸・通信業」は調査開始後初めて100万円を超えるなど、好調さがうかがえる。

 また、規模別では総資本「1億円未満」が「建設業」、「卸売業」、「小売業」の 3業種が前年度を下回った影響で全産業でも前年度を下回った。その他、業種別では全 5 業種中「建設業」、「製造業」、「卸売業」の3業種で、規模別では総資本「100億円以上」を除く4区分で前年度の増加率を下回っており、一人当たり経常利益の伸びは鈍化傾向にある。

 企業の安全性を測る指標のひとつである「自己資本比率」を見ると、全産業平均で24.68%となり前年度比1.79ポイント増加、リーマン・ショック前の2007 年度(24.71%)に迫ったものの、わずかに届かなかった。また、規模別では全区分で改善、なかでも総資本「1億円未満」は改善幅が最も大きく(前年度比3.01ポイント増)、2年連続で3ポイント以上改善した。

 業種別では、「建設業」、「製造業」、「卸売業」、「小売業」の4業種が前年度を上回った。特に「建設業」は、住宅建設など好調な民需のほか公共工事の増加で前年度比2.91ポイント増となり、最大の増加幅となった。しかし、リーマン・ショック前の 2007 年度と比較すると2.05ポイントの開きがあり、未だにリーマン・ショック前の水準にまでは回復していない。

 一方、「運輸・通信業」は、前年度比0.05ポイント減とわずかに減少。さらに、総資本「1億円未満」を見ると「小売業」、「運輸・通信業」の2業種が債務超過、特に「小売業」は2年連続の債務超過となった。

 企業の収益性を測る「売上高経常利益率」を見ると、全産業平均で2.57%となり、前年度比0.03ポイント減少した。業種別で悪化したのは「建設業」と「卸売業」の2業種。特に「建設」は大手ゼネコンを中心に堅調な公共工事と首都圏における住宅・商業施設の建設など民間需要が好調だが、その恩恵が下請け企業まで行き渡っていない状況などもあり、総資本「1億円未満」の小規模企業では0.73ポイントの減少となった。

 一方で「製造業」は、企業のコスト削減の取り組みなどで前年度比0.04ポイント増とわずかに上回ったが、総資本「100億円以上」の大企業を見ると、全5 業種中唯一悪化しており、前年度に比べ円安の追い風が一服したことが背景にあると考えられるとしている。(編集担当:慶尾六郎)