11月19日、ペルーで開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)において日露両国首脳による会談が行われた。このなかで、日露両首脳は12月に山口県で再び首脳会談を行い、幅広い分野での協議が行われることを確認した。こうした安倍首相の「新しいアプローチ」による交渉とともに、2013年4月に発表された「日露パートナーシップの発展に関する共同声明」をはじめとする日露経済交流などを両政府がより加速させることで、日本企業のロシア・ビジネスにおける大きな転機となる可能性がある。
そこで、帝国データバンクでは、2016年11月時点の企業概要データベース「COSMOS2」(約146万社)と信用調査報告書ファイル「CCR」(約170万社)、その他公開情報を基に、現地企業への出資、現地法人および関係会社・関連会社の設立・出資、駐在所・事務所の設置などを通じて、ロシアに進出していることが判明した日本企業を抽出し、業種別、進出地域別、年商規模別、本社所在地の都道府県・地域別に集計・分析を行った。
ロシアに進出している日本企業は、2016年11月時点で314社あることが判明した。業種別に見ると、最も多かったのは「製造業」の135社(構成比43.0%)。以下、「卸売業」の88社(同 28.0%)、「サービス業」の35社(同11.1%)と続き、上位3業種で258社となり、全体の82.2%を占めた。業種細分類別に見ると、事業持ち株会社などを含む「投資業」が13社(同4.1%)でトップ。以下、「自動車製造業」(11社、同3.5%)、「各種商品卸売業」(10社、同3.2%)と続いた。
製造業各社の進出内容を見ると、「製造拠点」として進出する一方で、「販売拠点」として進出している企業も多く見られた。ロシアでは、現地でのサプライヤーとなる部品メーカーなど裾野産業が発達途上にあることなども影響していると見られる。
ロシアへの進出地域が判明した249社を進出州別に見ると、首都モスクワ市を含む「モスクワ州」が161社(構成比64.7%)で最多となった。以下、日本海に面した港湾都市であるウラジオストク市など「沿海地方(プリモルスキー地方)」(34社、同13.7%)、“ロシアのデトロイト”とも称される古都サンクトペテルブルク市を含む「レニングラード州」(21社、同8.4%)と続いた。
約6割の企業が首都であるモスクワ市近郊に集中しているものの、比較的日本に近い地理的条件のほか、商社を中心に開発が進んでいることなどを理由に、「沿海地方(プリモルスキー地方)」や「サハリン州」など、極東地域も上位となった。
年商規模別に見ると、「1000億円以上」が107社(構成比34.1%)でトップ。次いで「100億円以上1000億円未満」の86社(同 27.4%)となった。ロシアが有する資源や内需目的の大企業が多く進出しており、上場企業が136社(同 43.3%)を占める。
進出企業の本社所在地を都道府県別に見ると、「東京都」が157社(構成比 50.0%)で半数を占めた。2位は「大阪府」(32社、同10.2%)、3位は「北海道」「神奈川県」(21社、同6.7%)となった。
また、本社が所在する各地域におけるロシア進出の特化係数を比較すると、全国基準(1.00)を上回ったのは「東京都」(3.57)、「北海道」(1.37)、「近畿」(1.15)の3地域となった。特に「北海道」は、都道府県別でも上位に位置しており、地理的にロシアと最も近いことが影響していると見られるとしている。(編集担当:慶尾六郎)