大人気の「コンビニおにぎり」。一握りに込められた日本人の思い

2016年12月23日 19:41

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有明海に浮かぶヤマハ海苔養殖専用船「DW-480-0A」

今や、日本全国どこに行っても目にする「コンビニ」。セブンイレブン、ローソン、ファミリーマートの大手3社は、それぞれ全国で10000店を超える店舗数を誇る。

 そんなコンビニの定番商品といえば、「コンビニ弁当」や「コンビニおにぎり」ではないだろうか。セブンイレブンを選ぶか、ローソンを選ぶか、はたまたファミリーマートに行くのか。もしも大手3店が軒を連ねていたとしたら、弁当やおにぎりの味の好みで決めるという人は少なくないはずだ。それだけに、コンビニの商品の中でも、弁当やおにぎりは開発の気合の入り方が違う。とくにここ数年、コンビニおにぎりの進化には目を見張るものがある。具材のバリエーション、素材へのこだわり、オリジナリティや意外性に溢れた商品も増えている。

 とにかく、日本人はおにぎりが好きだ。株式会社クレハが20~60代の女性400人を対象に行った、「おにぎり」に関する意識調査によると、「おにぎりを食べることの好意度」については、「とても好き」「やや好き」との回答が全体の83.5%にのぼり、「やや嫌い」、「とても嫌い」は全体の0.8%にとどまった。しかも40代以上では「嫌い」が、なんと0%になったという。

 また、一般社団法人おにぎり協会が発表した2014年の「コンビニおにぎり人気調査結果」によると、年間もっとも人気を集めたおにぎりの具材は「シーチキンマヨネーズ」で、セブンイレブン及びローソンで1位、ファミリーマートでも2位という結果になっている。次いで、ファミリーマートで1位となった「鮭」、「昆布」など、定番の具材が人気を得ているようだ。

 また、おにぎりに対する「こだわり」も購買意欲の後押しになっているようだ。コンビニおにぎりを食したことがあるのなら、陳列棚に並んだおにぎりの中に「新潟県産コシヒカリ使用」とか、「有明海産海苔使用」などと書かれたパッケージを見かけたことがあるはず。そう、おにぎりは具も大事だが、それ以上に米、そして海苔が重要だ。米や海苔が美味しくないと、どんな具材を使ったとしても、美味しいおにぎりになるはずがない。

 ちなみに、有明海の海苔養殖は、佐賀と福岡、熊本の3県を中心に行われているが、その需要の大半は、コンビニおにぎりだという。初摘みの海苔は柔らかく、味も良いので主に贈答品用として出荷されるが、あとの7割近くがコンビニに出荷されているという。いわば、有明海の海苔産業を支えているのが、コンビニおにぎりというわけだ。

 とはいえ、大手3社だけで全国30000件を超すコンビニ業界だから、細々という仕事でもない。有明海の海苔の摘み取りは、種付けから約 1か月後、11月の中旬から始まるが、それからしばらくはかなりの重労働になる。

 そんな漁師たちの頼もしい相棒となるのが船だ。60年代ごろまでは木製の和船で漁をしていたが、65年頃からヤマハ発動機がFRP(繊維強化プラスチック)を使った船の普及推進キャンペーンを行うなどした結果、スピードや積載量など海苔養殖の作業効率を大幅に改善し、瞬く間に普及した。今では有明海に浮かぶ海苔養殖漁船の多くがヤマハ発動機製だ。ヤマハは1970年からディーゼルエンジンを搭載した大型漁船の量産を開始しているが、それは有明海に向けた海苔養殖専用船だったそうで、ヤマハにとっても有明海は縁の深い土地ということになる。

 いつも何気なく手に取っている「コンビニおにぎり」だが、そのほんの一握りの中に、日本の農業、漁業、工業、さまざまな人の思いと歴史が詰まっていると思うと面白い。(編集担当:藤原伊織)