都道府県の各自治体は、建設・住宅業界関連団体との協定を数多く結び、来るべき大災害に向け準備を進めている。(写真は3月29日に埼玉県庁で行われた「災害時における応急仮設木造住宅の建設に関する協定書」締結式の様子)
東日本大震災以降、木造の仮設住宅に注目が集まっている。
大規模だった震災は被災者を受け入れる仮設住宅の供給が追い付かないという事態を招いた。一般的な仮設住宅と言えばプレハブだが間に合わず、これを補ったのが木造の仮設住宅だった。宮城・福島両県の一部ではこれを採用し、業界関係者をはじめ行政や自治体から大いに注目を集めた。木造の仮設住宅はプレハブと比較して工期も同等で、さらにコスト的にも安く、断熱性能も高いなどメリットも多い。そして何と言っても、傷ついた被災者の心を”木”の温もりで癒してくれる効果は大きいはずだ。
このような状況を踏まえ、各自治体では大規模な自然災害を想定し、木造の仮設住宅を準備する動きが活発化している。
埼玉県は3月29日、「埼玉県住まいづくり協議会」及び東日本大震災後、工務店サポートセンターと全国建設労働組合総連合が連携して設立した「全国木造建設事業協会(全木協)」との間でそれぞれ、『応急仮設木造住宅の建設に関する協定』を締結した。
「埼玉県住まいづくり協議会」は悪徳リフォーム業者対策において、全国で初めて成果を挙げその名を知られるようになった団体で、住宅関連業界以外にも銀行やマスコミ、多くの公共団体から組織化されており、珍しい形態の官民一体型の協議会。行政の政策にも強力なアドバイザー的存在である。
同協議会の会長を務める宮沢俊哉アキュラホーム社長は「埼玉県住まいづくり協議会に加盟する木造住宅会社が、東日本大震災で木造軸組み工法による短期間での仮設住宅供給を行った。その経験やノウハウを活かして供給体制を構築し、災害発生時には会員が団結して応急仮設木造住宅の建設を迅速に行いたい」と語った。
現在、都道府県の各自治体は埼玉県の例のように、建設・住宅業界関連団体との協定を数多く結び、来るべき大災害に向け準備を進めている。だが、災害では”想定外”の事態が発生するもの。今回の大震災で失われた多くの尊い命を決して忘れず、まず”生きてこそ”の仮設住宅であることを改めて認識したい。その上で、甘すぎる対策にならないよう万全の体制づくりをして欲しい。