【2016年振り返り】コンビニ業界に7年ぶりの順位変動 ローソンが3位に後退

2016年12月31日 18:28

画:【2016年振り返り】コンビニ業界に7年ぶりの順位変動 ローソンが3位に後退

コンビニ業界はセブン-イレブン、ファミリーマート、ローソンの大手3社だけで業界全体の売上の85%を占めている。万が一現在4位のミニストップが3社のどこかと提携や統合などした場合、その割合は95%となり寡占化が大きく進むことになる。

 2016年、コンビニ業界には大きな動きがあった。まずは2月、ファミリーマート<8028>がサークルKサンクスを傘下に持つユニーグループ・ホールディングス<8270>との経営統合を発表し、9月に統合を完了させた。業界3位のファミリーマート(約1万1600店舗)が同4位のサークルKサンクス(約6300店)を統合することで巨大なネットワークが誕生。2位だったローソン<2651>(約1万2400店)を店舗数で追い抜き、業界2位の座を手に入れた。09年から変わらなかった最大手セブン-イレブン<3382>(約19000店)、2位のローソン、3位のファミリーマート、4位サークルKサンクス、5位ミニストップ<9946>という順位が変動したことは業界史に残る出来事だった。

 ファミリーマートは以前から攻勢を仕掛けている。10年にエーエム・ピーエム・ジャパンを吸収合併し「am/pm」店舗はファミリーマートに転換済み。さらに東海地区が地盤の中堅コンビニ「ココストア」と「エブリワン」も買収し、全650店舗の看板がことしの10月から順次「ファミリーマート」にかけ替えられている。不得手とされていた地域で店舗基盤を強化することで競争力を強化していく方針だ。

 対して、3位に後退したローソン。長らく守ってきた業界NO.2の座を明け渡したことは関係者やマスコミの間では「非常事態」ともされている。しかし同社も生き残りをかけるべく地盤拡大に取り組んでおり広島県が地盤のポプラと2014年に、神奈川県発祥のスリーエフとことしの4月に資本提携している。両店の合計店舗数は1000強。全てを取り込んだところで2位浮上はかなわないが、同社は「共同店舗」という形で新たな可能性を模索している。

 9月には千葉県白井市で「ローソン・スリーエフ」1号店をオープン、スリーエフの店舗を通常のローソンに改装した上で、焼き鳥などスリーエフの人気商品も30品目ほど揃えているのが特徴だ。スリーエフが商品の共同開発実績があるファミリーマートではなくローソンと手を組んだのは「経営の独立性と看板の維持」ができるという店が大きかったという。ただしスリーエフの17年2月期の最終損益の会社計画は12億5000万円円の赤字で、「ダブルブランド」が成功例となるかはまだ不透明だ。

 そして、1979年から不動の業界1位に君臨するセブン-イレブン。16年2月期第3四半期決算は売上高が前年同期比7.7%増6001億8800万円、営業利益が5.9%増の1800億4100万円となっており、成長を続けている。3月に高知県、6月に青森県、10月に鳥取県と未踏の県にも続々進出。沖縄以外の46県に出店を拡大させた。

 最新のデータでは、セブン-イレブンとファミリーマートの店舗数の差は1000あまり。しかし実際にはそれ以上の「差」があり、ファミリーマートがセブン-イレブンに追いつくのは容易でないとされている。それが「平均日販」という、店舗1日当たりの売上高だ。セブン-イレブンの平均日販は約65万円。一方ファミリーマートは約51万円、ローソンは約54万円となっている。来店客1人当たりにすれば、おそらく飲み物1本・ホットスナック1個を余分に買っているかどうかの差だ。

 セブン-イレブンは昔からこの平均日販で他社に大きく差をつけている。弁当やサンドイッチなどのデイリー商品の販売構成比が30%高いことが背景にあると考えられている。「お弁当+お茶+スイーツ」のような「ついで買い」が多いということだ。代名詞であるいれたてコーヒーや苦戦が続いているもののドーナツも貢献しているだろう。実はデイリー商品は消費期限が短く廃棄リスクが高いことから、他社が積極的に揃えにくい分野。セブン-イレブンは「王者の余裕」といわんばかりに同カテゴリーの品質向上と品揃えの充実を果たし、消費者からの信頼を得た形だ。

 順位が入れ替わったものの、セブン-イレブンの一強状態は崩れていない。2位と3位がしのぎを削り合い、地方の中堅を手中に収めていく。その傾向がより強く見られたのが今年のコンビニ業界だ。(編集担当:久保田雄城)