稲田朋美防衛大臣が今月29日、A級戦犯合祀の靖国神社に参拝した。さきの戦争が日本の侵略によるものである以上、戦争を引き起こした政治犯としてのA級戦犯を祀っている神社を時の防衛大臣が参拝すれば、韓国、中国が深い憂慮や強い遺憾の意を示し、抗議するのも理解できる。
稲田氏は記帳の際「防衛大臣、稲田朋美」と書く一方、「一国民として参拝した」と言い、玉串料を私費で払った。少なくとも一国民なら肩書は書くべきでない。防衛大臣と書けば一国民の立場でなくなる。
稲田氏は靖国神社参拝に「いかなる歴史観に立とうとも、いかなる敵、味方であろうとも、祖国のために命をささげた方々に対して感謝と敬意と追悼の意を表するのは、どの国でも理解をしていただけるものと考えております」と答えたが、それは時の政権による国家政策により徴兵され戦死した方々への参拝であって、A級戦犯に対する閣僚参拝に対し理解できるものではない。
閣僚である間は靖国神社への参拝がアジア近隣諸国との関係において国益を害する行為になることをふまえ、自粛することを求めたい。野田内閣においてはそれを実行した。そのうえで、閣僚による靖国神社参拝問題を「こころの問題」と片づけるのではなく、現実問題として国益にかかる問題になっていることを受け止め、議論して頂きたい。
またA級戦犯の合祀には昭和天皇も反対の意であったとされる。合祀以降、靖国神社に足を運ばれることはなかった。その意は今の陛下も踏まえておられるもよう。
A級戦犯合祀問題を政教分離の原則から政治は関与できないという視点でなく、国益にかかわる国際的問題として、A級戦犯分祀を考える時期にきている。
同時に政教分離の徹底をいうのであれば、特定宗教とは無関係な「国立の戦没者追悼施設」の検討を始めることを期待したい。その際にもA級戦犯は分祀することが必要なことはいうまでもない。でなければ、閣僚による参拝は靖国神社参拝同様に日韓、日中など周辺諸国との関係において「国益を損ねる」結果になる。この問題は2017年には是非、解決への取り組みを与野党超えて始めて頂きたいと願う。(編集担当:森高龍二)