米国ではガソリン安が続き、昨年発表したトヨタのハイブリッド車「新型プリウス」など、日本製環境対応&低燃費車が売れていない。「燃料が安いからピックアップなどの“大型車を”買う」という“米国民独特の軽薄な購買意欲”に日本勢は付いていけなかった」
日本自動車メーカー各社の北米市場における販売鈍化が鮮明になってきたのは、対外強硬派のトランプ氏が勝利した、先の米国大統領選挙の前からだった。トヨタなど日本自動車メーカー6社の2016年一年間の推定販売台数は、前年度実績比2.5%増の820万台で、伸び率は15年度(7.8%)の3分の1以下、5年ぶりの低水準となる見通しだ。
米国内の論評では、「リーマン・ショック後の自家用車買い控えから、その後一気に伸長し、クルマの買い替え需要が一巡したことも大きな要因だ」としている。また、ガソリン安で燃費が悪くても大型車のピックアップトラックなどが人気を集める。「燃料が安い今だからピックアップなどの“大型車を”買う」という“米国民独特の軽薄な購買意欲”に日本勢は付いていけなかった」ということでもある。
昨年発表したトヨタのハイブリッド車「新型プリウス」など、日本製環境対応&低燃費車が売れていないのだ。日本のメーカーにとって北米市場は販売台数が最も多く、日本車失速が長引けば経済的な影響は大きい。
大手トヨタは2016年度に北米で前年度比0.6%減の282万台の販売を計画している。が、これは5年ぶりのマイナスだ。日産、ホンダ、マツダ、三菱自動車も伸び率は前年比マイナスで、プラスと試算するのはフォレスターなどのSUVが好調な富士重だけという状況だ。
北米の新車市場は2008年のリーマン・ショック後の買い控えの反動で、2010年以降は6年連続で伸長した。米調査会社によると、15年は過去最高の1747万台だ。が、「米国自動車市場はピークアウトした」との見方が経済界では多い。
さらに米国では、次期大統領にトランプ氏が決まるなど、世界経済の先行きには不透明感が漂う。自動車関連業界からみた世界経済の動向やトランプ米政権への懸念など、日本の自動車業界でも疑心暗鬼、模様眺めといった状況となっている。
一方で、米の自動車市場の現状と先行きについて、「先行きは少し慎重にみている。が、個人消費は底堅く、自動車市場は好調に推移している。ここ数年、販売が伸びた新車が間もなく中古市場に回る。自動車ローンが拡大し、リースも増えている。これらは新車市場の頭打ちを感じさせるデータといえる」とする見方が多い。
次期米大統領、トランプ氏への懸念も多い。心配なのは自動車生産国である隣国メキシコだ。日本の自動車メーカーはほとんどメキシコ進出。トランプ氏は北米自由貿易協定(NAFTA)を再交渉するといっている。それがどういう形で決着するのか注視する業界関係者も多い。
逆に言うなら、米国ビッグ3 だって、メキシコに生産拠点を移しており、メキシコで現地生産をして米国に輸出することで、米国人は割安な自動車を購入しているのだ。
先行きが妖しくなってきたTPPが12カ国で批准されて発効し、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)と連携すれば、経済も活性化すると非常に期待されていた。が、最大の市場である北米との貿易拡大が消失するとどうなるのか。
逆に、トランプ効果なのか、11月から12月にかけてドル高・円安が進む。米国の景気拡大への期待が大きいのか、米国市場への期待が高まり、米国外に出ていた資金が国内に戻ってきたようだ。
自動車稼ぎ頭の北米市場の需要が減速するなか、日本車各社は販売会社への販売奨励金の積み増しやSUVなど人気車種の生産拡大で、日本各社はテコ入れを図る。
でも、トランプ効果でどんどん「円安」が進めば……。(編集担当:吉田恒)