ブロックチェーンは電子通貨の取引などで活用され、高い堅牢性や低コストといった特徴から注目を集める技術だ。ただし、同技術活用において代表的なものであるビットコインの取引では、現状の処理速度が最大27件/秒となっていることが示すように、「遅さ」に課題がある。このため大規模システムでの実用性については疑問の声も上がっていた。こうしたなか、ブロックチェーン技術開発のテックビューロは、さくらインターネット、アララと共同でインターネットとブロックチェーン技術を用いた大規模な電子マネー勘定システムの実用性検証を実施した。検証では障害を想定した状況を発生させ、システムに高い負荷をかけた環境下での処理能力への影響を確認。検証環境下においてもシステムは安定して高い処理能力を維持する結果となった。
実証実験ではテックビューロ開発のプライベートブロックチェーン製品「mijin(ミジン)」の最新バージョンを使用、1台あたりの月額利用料金5万円程度のクラウドサーバー3台(総計15万円程度)の構成で電子マネーの大規模勘定システムを構築した。1時間当たり1080万件の取引を想定し、3台中2台のmijinを6分間停止、その間残りの1台にリクエストを集中させた。検証環境下においても同システムにおける処理実行件数、平均3085.77件/秒、最大4142件/秒のパフォーマンス状態を維持し、取引記録の正確性も落ちなかった。今後は同システムでの対改ざん性試験や対攻撃性試験を実施し、さらなる実用性を確認する予定。
近年では大手金融機関もブロックチェーン導入への取り組みに積極的だ。日本の3大メガバンクが参加して実施した銀行間決済のペイメント置き換えの実証実験では、1拠点での実験で処理実行件数1500件/秒を達成し、全銀システムのピーク時処理能力1388件/秒にも耐えうることを実証済みだ。現行の金融サービスで活用される台帳システムは古いシステムに新しいシステムを重ねることでアップデートしており、年々新旧システムの齟齬確認が煩雑化している。これがリスクや非効率化につながっており、肥大化したシステムの維持に数十億ドルを要するケースもある。これがブロックチェーンに置き換わることでプロセス明確化を促進し効率化や大幅なコスト削減につながるとのこと。テックビューロによるmijinなどスケーラビリティの高いソリューションの登場により、既存の銀行システムの置き換えがさらに現実味を増したといえる。(編集担当:久保田雄城)