ブロックチェーン活用で食品管理の安全性向上とコスト削減へ ウォルマート導入試験

2016年12月05日 08:10

画.ブロックチェーン活用で食品管理の安全性向上とコスト削減へ ウォルマート導入試験

米ウォルマートは米IBMと共同で、商品管理にブロックチェーン技術の導入試験を開始した。

ネットワーク上でデータを分散させて管理し、高い信頼性を担保するブロックチェーン技術が、小売りでも活用され始めている。米ウォルマートは米IBMと共同で、商品管理にブロックチェーン技術の導入試験を開始した。小売りでは顧客が購入した食品で問題が発覚した際に、大量の商品回収が発生することになる。ブロックチェーン技術の仕組みを商品管理に組み込むことで、流通経路など重要な情報をレシートから読み取ることが可能となる。これにより問題が発生した食品の生産場所やサプライヤーを短時間で特定、従来、数百店舗で商品回収を要していたものが汚染商品のみの回収で済むようになる。また、商品の流通経路の特定に数日かかっていたものが数分に短縮されるとのこと。

 商品管理が正確に行われることは、顧客や企業に安全・安心を提供するほか、店舗への配送時間の短縮や廃棄物の削減といった効果も期待できる。ウォルマートは10月に米国の包装食品と中国の豚肉で試験的にブロックチェーン技術の導入を開始、順次対象商品を拡大していく計画。

 ブロックチェーン技術は、主に金融の分野で実用化に向けた実証実験が盛んだ。11月30日にはデロイトトーマツグループが、みずほフィナンシャルグループ、三井住友銀行、三菱UFJフィナンシャルグループ参加のもと実施の、銀行間決済に関する大規模実証実験内容を公表。同実証実験では全銀システムのペイメント業務をブロックチェーン技術により置き換えることへの適用可能性が立証できたとのこと。

 一方で、改ざんや二重使用が不可能として、絶対的な安全性が唱えられてきたブロックチェーン技術の脆弱性を示す研究も発表されている。ブロックチェーン技術では、ネットワーク上で一連データを照合する「合意形成」に10分間を要する仕組みになっているが、店舗での支払い場面などでは合意形成を簡略化した「Fast payment」と呼ばれる方式を採用することがある。この際に同じコインで別のものを購入しネットワークで先回りして一連データを拡散することで、先に購入したもののデータが破棄されてしまい、コインの二重使用が成立してしまう可能性があるとのこと。同様に合意形成のタイミングをずらすことで二重支払いやシステム停止を成功させる可能性が指摘されており、ブロックチェーン技術の安全神話が揺らいでいる。合意形成方式は数種類開発されており、社会実装の際にはより安全性の高いものの採用が望まれる。(編集担当:久保田雄城)