【今週の展望】日米英中銀イベント、重要指標、企業決算が重複

2017年01月29日 20:26

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ただでさえ忙しい、中央銀行イベントと雇用統計などの重要経済指標の発表と決算シーズンが全て重なったら、せわしなさ、複雑さ120%の週になる

 日足一目均衡表の「雲」は27日、17775~18656円に位置していた。その上限は27日終値19467円から811円下にある。今週の雲は、下限は17852円でずっと一定だが、上限は1月30日の18903円から31日には19000円ジャストになり、2月2日まで19002円にとどまった後、3日に19084円まで上昇する。上限はこの後、7日には19100円を超え、18日の19135円でピークに達するというスケジュール。2月3日以降は、1月上・中旬のように為替レートや要人発言に振り回されてアップダウンを繰り返したりすると、雲の中に入ってしまうだろう。

 ボリンジャーバンドでは、27日終値19467円は25日移動平均-1σの19014円と+1σの19474円の間の「ニュートラル・ゾーン」に4週連続で入っているが、+1σとの距離はわずか7円しかない。+2σは237円上、-1σは453円下にある。上には動きにくく、下には動きやすい位置にある。

 前週末のオシレーター系指標は、「買われすぎ」シグナルが1個だけ点灯している。88.2のストキャスティクス(9日・Fast/%D)で、買われすぎ基準の70をオーバーしている。前々週末は「売られすぎ」だったRCI(順位相関指数)は+11.9でプラス転換した。それ以外の指標は、25日騰落レシオは100に届かず99.7、ボリュームレシオは59.2、サイコロジカルラインは7勝5敗で58.3%、25日移動平均乖離率は+1.1%でプラス転換、RSI(相対力指数)は50.3だった。

 1月20日時点の需給データは、信用買い残は1月13日時点から285億円増の2兆1954億円で3週連続の増加。信用倍率(貸借倍率)は2.36倍から2.40倍へ2週連続の増加。信用評価損益率は-7.67から-8.30へ2週連続の悪化。裁定買い残は103億円増の1兆6565億円で3週ぶりに増加した。1月16~20日の投資主体別株式売買動向は、外国人は1039億円の4週ぶりの売り越し、個人は105億円の2週連続の買い越し、信託銀行は507億円の6週ぶりの買い越しだった。トランプ大統領就任式という節目を前にして、東京市場の需給に変化が現れていた。

 前週5日間のカラ売り比率は、23日が39.3%、24日が39.3%、25日が38.2%、26日が35.3%、27日が38.0%。需給環境が悪く大引け間際に先物の仕掛け売りに見舞われた23、24日は40%に近かったが、反発した25日、先物高値引けの26日、3日続伸の27日は低下した。それでも高めの水準にある。日経平均VI(ボラティリティー・インデックス)の27日終値は18.34で、20日終値の19.94から1.6ポイント下落。前週は23、24日は20を超えたが、25日以降は19を割り込み、リスクオンしていた。

 前週末27日のNYダウは7.13ドル安で4日ぶりに反落したが2万ドル台堅持。NASDAQはプラス、S&P500はマイナス。原油先物価格は小幅下落。金先物価格は4日続落。ヨーロッパ市場は英国はプラス、ドイツ、フランスはマイナスだった。アメリカの経済指標はまちまち。12月の耐久財受注額は全体では-0.4%だがコア資本財は+0.8%で市場予測より上。1月のミシガン大学消費者態度指数確報値は98.5で、速報値から0.4ポイント上方修正され市場予測を上回り、13年ぶりの高水準。しかし10~12月期のGDP速報値は+1.9%で7~9月期の+3.5%から悪化し市場予測の+2.2%も下回った。シェブロンの決算は黒字化したがEPSは市場予測を下回った。NY時間の為替レートはドル円115円台前半、ユーロ円123円台前半で円安が進行。大阪夜間取引終値は19430円。CME先物終値は19470円だった。

 25日、NYダウが2万ドルを突破してウォール街がお祭り騒ぎになった時、東京では「次は日経平均2万円だ」という声があっちこっちであがった。だがそこに「こうしてこうなれば2万円に届く」という具体的な根拠は、何一つなかった。あったのはただ、ウォール街への身の程知らずの対抗心と、キリがいい数字をクリアしたい願望、だけだった。

 NYダウの2万ドルは史上最高値更新だが、日経平均の2万円は全く異なる。1989年12月29日にマークした史上最高値38915.87円の、およそ半分にすぎない。100点満点で言えば51点。直近のザラ場での日経平均2万円突破は2015年12月1日と2日の両日だが、その時の為替のドル円は122~123円台だった。少なくともドル円が120円を超えなければ、日経平均2万円は見えてこないだろう。今週の高々115円程度のドル円レートで「2万円」と口にするのは、2万円に対して失礼というもの。それはたとえて言えば、お正月に神社に初詣に行って今年の願い事を絵馬に書いて奉納するようなもので、人前で披露して実現を誓う「今年の抱負」とは、全くの別物だ。

 現実を直視するなら、ドル円が115円台に安定的に乗せるという条件付きで、1月5日の直近ザラ場高値の19615円が今週の高値のメドになるだろう。あと148円の上昇でクリアできるので容易そうに見えるかもしれないが、そこに至るまでの障害物が実に多い。

 まずはテクニカル面。前週は24日終値の18787円から3日で680円も駆け上がったので、週初から上値追いできる余地がそれだけ少なくなっている。ボリンジャーバンドは25日線+1σにほぼ接し、オシレーター系指標には「買われすぎ」も1個ある。また、チャートを見ると直近ザラ場高値をつけた翌日の1月6日以降、19400円台までは上がるが19500円の「天井」に何度もはね返され、抜けられなかった日が、数えると15営業日中5回もあった。

 ファンダメンタルズ面でも、今週は雇用統計発表前の様子見に加え、日米中とも経済指標が多く出る上に企業決算シーズンが重なり、おまけに日米英の中央銀行イベントも揃い踏みする。偶然とはいえ、上値追いにタックルをかける障害物が密集している。悪くすると、バッドニュースが重複してにわかに為替の円高が進行し株価指数急落という事態もありうるが、下手をするとそれに拍車をかけかねないのが、新任のホワイトハウスのボスの過激な言動だろう。

 一方、27日終値より下には、下落を食い止めそうなサポートラインがいくつか存在する。19244円の25日移動平均線はその第一候補で、その下には19182円の1月SQ値がある。売り買いのポジションが集中する19000円の心理的節目の下には18867円の12月メジャーSQ値もある。1月はザラ場で19000円を割り込んだ営業日が6回あったが、そのうち終値で12月メジャーSQ値を下回ったのは17日と24日の2回だけだった。〃防衛力〃はあるとみていいだろう。そして忘れてはいけないのが、前場売られて落ち目の三度笠でも、東京市場には後場、日銀のETF買いという強い味方があったのだ。

 ということで、今週の日経平均終値の予想変動レンジは18900~19600円とみる。

 現代とは、何でも「複雑化」する時代。科学技術でも政治でも経済でも文化活動でも、人類のあらゆる営みの構造はピースが緻密に組みあげられ、ますます複雑化し、専門化した。それは国境も、体制や民族や文化の違いも軽々と超えていった。ところが、そこへ強大な権力をふるって強引に「単純化」を試みる人物が出現したら、どうなるのか? 人々は当惑し、少なからぬ混乱が起き、構造はそれ自体の存在意義を問い直され再構築を余儀なくされる。それこそ真の意味の「パラダイム・シフト」で、行く手には黄金時代も暗黒時代も両方、ありうるだろう。2017年、人類はそんな〃壮大な実験〃に付き合わされているのかもしれない。