任天堂の2016年4~12月期決算 営業外の利益が突出するいびつな決算を3月発売「スイッチ」が正常化するか?

2017年02月01日 20:24

 ■「3DS」は年末商戦で成果をおさめたが、フィギュア「アミーボ」は軌道に乗らず

 1月31日、任天堂<7974>が2016年4~12月期(第3四半期)決算を発表した。売上高(3111億円)は前年同期比で26.9%減、営業利益(263億円)は38.1%減、経常利益(491億円)は11.2%減、四半期純利益(1029億円)は153.9%増(2.53倍)という最終大幅増益。四半期純利益の2017年3月期の通期見通しに対する進捗率は114.4%だった。

 携帯型ゲーム機「ニンテンドー3DS」は、11月に発売し年末までに世界で1469万本を売り上げた大ヒットゲーム「ポケモン サン・ムーン」の効果もあり、年末商戦では当初の販売台数見通しを引き上げる善戦。スマホアプリ「Pokemon GO」との相乗効果で「ポケモン」シリーズの過去タイトルが売れるという現象も起き、12月発売のスマホ向けゲーム「スーパーマリオ ラン」のヒットにもつながった。しかし全体では2ケタの減収、営業減益、経常減益が避けられなかった。ゲームに連動して遊ぶフィギュア「amiibo(アミーボ)」は利益率が高く期待されたが、販売が軌道に乗らなかった。

 四半期純利益の大幅増益は、保有していたメジャーリーグ、シアトル・マリナーズ運営会社の持ち分売却益635億円を特別利益に計上したことと、円安で外貨建て資産の評価額が上がり、4~9月期で399億円計上していた為替差損が解消して、逆に14億円の為替差益を計上したことによる。そのように突出する営業外の利益に依存した、ある意味いびつな決算になっている。

 ■通期は為替差益で大幅最終増益見通し「スイッチ」のスタートダッシュに期待

 2017年3月期の通期業績見通しは、売上高は前期比6.8%減の4700億円で修正していないが、営業利益は100億円下方修正し200億円で39.2%減、経常利益は200億円上方修正し300億円で4.2%増、当期純利益は400億円上方修正し900億円で445.3%増(5.45倍)で、大幅な最終増益になる予想。配当見込みも上方修正し、期末配当、年間配当とも170円上積みし380円とした(中間配当は無配)。前期比で期末配当は260円、年間配当は230円の増配になる。

 経常利益、当期利益、配当額を上方修正した主な理由は、為替レートが昨年秋以降、当初見通しよりも円安に振れたこと。今期の為替の前提レートをドル円100円から110円に、ユーロ円115円を120円に、それぞれ円安の方向に変更した。ドル建ての現預金などで保有している外貨建て資産の評価額が上がり、通期では413億円の為替差益が営業外収益に計上される見込み。

 一方、営業利益見通しを下方修正したのは、本業のゲーム機周辺の業績回復が進んでいないことに加え、人気ゲーム「どうぶつの森」のスマホ向け配信開始を今期中から4月以降に延期したことも影響している。3月3日発売の新型ゲーム機「Nintendo Switch(ニンテンドー・スイッチ)」の広告宣伝費のコスト増加も反映させているが、「スイッチ」の発売直後のスタートダッシュに、本業の本格回復、いびつな決算の正常化の期待をかける。(編集担当:寺尾淳)