インプレスR&Dが発表した「スマートフォン利用動向調査報告書2013」によると、2011年度には2820万台であったスマートフォンの契約台数は2012年度には4878万台へと急拡大、2017年度には9174万台にまで伸長すると見られている。これとともに拡大しているのが、コミュニケーションアプリ、ソーシャルゲーム、電子書籍サービスなどのブロードバンド・モバイルサービスの市場である。
ブロードバンド・モバイルサービス市場の中でもっとも馴染み深く、多くの人が市場拡大を実感しているのがソーシャルゲームであろう。平成25年3月期第3四半期連結決算において、売上収益が前年度比44.9%増、営業利益が同37.4%増となったMobageを展開するディーエヌエー<2432>の勢いが示す通り、富士キメラ総研の調査によるとこの市場は、2012年度は前年度比29.2%増が見込まれている。しかし順調そうに見えるこの市場であるが、特定アイテムを揃えることで希少アイテムが獲得可能なコンプリートガチャが問題視され、消費者庁から指導されたことで課金形態が変更。2013年度は前年度比12.4%増と成長が鈍化すると予測されている。基本的にはゲーム自体が無料であるこの市場で、いかにして課金するだけの魅力を提供し続けるか、暫くは模索が続くであろう。
一方で、何度も「元年」と呼ばれながら、昨年になって漸く本格的に普及が始まったのが電子書籍であろう。大きな課題となっていたコンテンツ不足に関しても、大手を中心に出版社11社が電子書籍化の推進を目的とした出版デジタル機構を設立。アマゾンの「Kindle」や楽天<4755>の「Kobo Touch」など専用端末の展開や、Apple、Googleによる7インチタブレット端末の投入など端末市場も動きが活発化している。さらに、サービスのマルチデバイス対応が進められており、特にスマートフォンはマルチデバイス向けサービスにおけるメインデバイスとなっていることから、スマートフォンの伸長が市場拡大を後押しするであろう。前出富士キメラ総研の調査では、2012年の電子書籍サービス市場は654億円であるが、2017年には2011年度比3.7倍の2343億円に拡大。スマートフォン向けでは同19.7倍、専用端末・タブレット端末向けでは同88.0倍にまで拡大すると予測されている。コンテンツの動向に大きく左右されるだけに、現在の流れをいかに継続させるかが当面の課題であろう。
今は順調に拡大しているとはいえ、スマートフォン・タブレット端末の国内市場は徐々に成長が鈍化する。それと共にこれらの市場も成熟し、淘汰が進むであろう。市場の好調さに胡坐をかかず、一過性ではない安定的なコンテンツを生み出せるか否か。今後の動向に注目が集まるところであろう。(編集担当:井畑学)