三重県津市にある民営飛行場、香良飛行場から1月28日、1機の飛行機が離陸した瞬間、歓喜の声が挙がった。この日行われたのは愛知県名古屋市立工業高校の生徒たちが製作したという、手作りの有人飛行機の試験飛行だ。
全長5.9メートル、幅9.5メートル、重さ174キログラム。1人乗りで500ccのプロペラエンジンも付いている。飛行機は同飛行場の滑走路を走り、時速45キロほどに達すると1メートルほど浮き上がり、そのまま5秒間で70メートルの距離を飛行した。飛行機が離陸した瞬間、見守っていた生徒や卒業生、教諭たちは大きな歓声を挙げた。
飛行機を制作したのは同校の飛行機同好会。航空機産業の人材育成を目的として、名古屋市科学館が主導で始めた事業の一環で、2010年から7年間もの歳月を掛けて開発した。
明治時代の航空機研究家である二宮忠八氏が残した「玉虫型飛行器」のスケッチを元に、生徒たちが放課後や休日を使って製作を進め、何度も試験飛行を繰り返してきた。しかし重量オーバーなどが原因で、なかなか飛行することができなかった。今回6度目の挑戦で飛行に成功。高校生が造ったエンジンを搭載した有人式飛行機が成功したのは国内初の快挙だという。
7年越しの夢が叶った初フライト。空を飛ぶ青空に映える銀色の機体は生徒や卒業生たちにとっては一層輝かしく見えたことに間違いないだろう。生徒は「嬉しくて言葉が出ない」「諦めないことの大切さを学んだ」と喜びながら語った。
日本の子どもたちの「理科離れ」が叫ばれている昨今だが、こうした快挙を聞くと、これからも優秀な若い人材が技術力と勤勉さで、高いレベルの日本のものづくりを牽引してくれるだろうと期待せずにはいられない。
アメリカでも今でこそボーイングを筆頭に名だたるメーカーが軒を連ね、航空機製造が盛んに行われているが、全ては1903年のライト兄弟による12秒間の有人式飛行機の初飛行から始まった。日本でもMRJの開発が進んでいるが、将来の航空機産業の発展がますます楽しみだ。(編集担当:久保田雄城)