【今週の振り返り】トランプ演説が「まとも」で185円上昇した週

2017年03月04日 20:35

0205_025

2月28日のトランプ大統領の議会演説は、「インフラ投資1兆ドル」がハイライト。「驚くべき減税」の具体策がなくとも、株価を押し上げるには十分な「実弾」。

 新規失業保険申請件数は-1.9万人の22.3万人。44年ぶりの低水準で雇用に心配はない。前日のブレイナードFRB理事に続き、パウエル理事も「3月利上げの根拠が強まった」「利上げは年3回を想定」と発言。連銀総裁の外堀、理事の内堀が埋まって、4日から14~15日のFOMCまでの「ブラックアウト(箝口令)」期間の直前になる3日は、いよいよ「本丸」のFRBのイエレン議長、フィッシャー副議長の講演が控える。ブルームバーグの「3月利上げ確率」は90%まで高まった。アメリカの長期金利は上昇したが為替レートはドル円114円台前半、ユーロ円120円台前半。大阪夜間取引終値は19570円。CME先物清算値は19555円だった。

 日経平均始値は13円安の19551円。高値は9時7分の19587円。安値は2時38分の19392円。終値は95円安の19469円。前日、ファーストリテイリング<9983>が発表した2月の国内ユニクロ既存店売上高は前年同月比+5.2%で3ヵ月ぶりのプラス。客単価+1.2%、客数+3.9%。春物の立ち上がりが好調だった。取引開始前は政府発表の経済指標ラッシュ。いつもは月末最終金曜日だが、2月は1週間後にずれた。消費者物価指数(CPI)は、1月全国は+0.1%で13ヵ月ぶりのプラスになり市場予測と一致。しかし2月東京都区部は-0.3%。1月の家計調査の二人以上世帯の実質消費支出は-1.2%で11ヵ月連続マイナスで市場予測の-0.4%よりかなり悪い。勤労者(サラリーマン)世帯はさらに悪くて-2.3%。ボーナス月の12月はプラスだったが、毎月の給与明細書から相変わらずボロボロ差し引かれては、消費する気が起こらない?

 1月の有効求人倍率は1.43倍で横ばい。市場予測より0.01ポイント悪いがバブル期以来の高水準。しかしバブル期はもっと楽に職につけたはず。ハローワークからの紹介でも自分の好き嫌いで難癖をつけて応募者を落としまくるくせに、同業者に「人がいない」とボヤき倒す中小企業経営者は存在する。いつか裁きにあう。1月の完全失業率は3.0%で市場予測と一致し、前月比で0.1ポイント改善。就業者数は5万人増加していた。

「ひなまつり」の3日の日経平均は小幅安で始まるが、数分後にプラスにタッチ。TOPIXも少し遅れてプラスに浮上するが、長続きしない。9時台は19550円付近の小幅安圏でウロウロするが、10時前から30円ほど下落して安値更新。その後は19500円台前半、50円安以内のマイナス圏でくすぶる。中国の財新の2月の非製造業PMIは52.6で前月の53.1から低下。それでも50は超える。11時台の為替のドル円は114円台前半のままで、日経平均も19500円台前半で横ばいのまま前引け。TOPIXはマイナスだが日経平均が27円安では、3月になって初めての日銀のETF買いが入るかどうかは微妙。

 昼休みに為替はあまり動かなかったが、日経平均は下げ幅を100円以上に拡大して再開し、直後に19500円割れ。0時台は19450円付近まで、1時台は19416円まで下げて安値更新。利益確定売りの金曜日に加え「FRBのイエレン議長、フィッシャー副議長の講演待ち」もある。人民元レートが安くなり上海市場も軟調。しかしドル円レートは114円10銭付近で、それほど円高に動いていない。2時台も再び安値を更新し日経平均は19400円を割り込み、マイナス幅は170円を超える。1日終値の19393円を1円下回って、2日の始値で開けた宮殿のような大マド埋めを完了。マドを埋めた後の終盤は19400円台を回復し、さらにその後半まで上昇して終えた。日銀のETF買いは入っていなかった。日経ジャスダック平均は16営業日続伸。もはや別の惑星ではなく、別の宇宙。

 この日、社運を賭けたと言っても過言でない4年ぶりの据置型ゲーム機の新製品「NINTENDO SWITCH(スイッチ)」を世界同時発売した任天堂<7974>は3.65%高。予約販売は売り切れの店が続出し、「勢いはソニーのPS4の発売時を超えた」という声も。販売実績の正式発表が待たれる。「春のパンまつり」実施中の山崎製パン<2212>は系列コンビニの「デイリーヤマザキ」が黒字転換という記事が出たものの0.22%安。製品アイテムの絞り込みを進めているので、来春は点数シールを集めにくくなる?

 シャープ<6753>は東証1部復帰のために再建スポンサーの鴻海が保有株の一部を売却すると報じられ0.88%高。東芝の半導体事業の買収資金の足しにする? その東芝は20.1%を保有する持分法適用子会社の工作機械メーカー、東芝機械<6104>の保有株の9割を売却と報じられ1.80%安。1枚1枚皮をはぐようなタケノコ生活。立会外で自社株買いを実施する東芝機械は4.55%高で昨年来高値を更新した。社名も変えて心機一転か? 東芝機械のココム違反事件の際、ワシントンDCの連邦議会議事堂(キャピトル・ヒル)の前で、議員たちが東芝のラジカセをハンマーで粉々に打ち壊すパフォーマンスを演じたのは1987年。30年も前だった。

 日経平均終値は95.63円安の19469.17円、TOPIX終値は-6.64の1558.05。売買高は17億株、売買代金は2兆1856億円。値上がり銘柄数は617、値下がり銘柄数は1256。プラスは7業種で、上位は任天堂が引っ張ったその他製品を筆頭に海運、水産・農林、電気・ガス、保険、空運など。マイナスは26業種で、下位は鉱業、石油・石炭、建設、不動産、金属製品、その他金融など。上海総合指数は0.36%安だった。

 今週の星取は3勝2敗。前週末2月24日の終値19283.54円から185.63円上昇して今週の取引を終えた。2週続けての上昇は、7週連続プラスを記録した昨年12月以来。1月、2月に上値をはね返す「壁」だった19500円を超えて週を終えられなかったので、「ボックスを抜けた」とは、まだ言えない。

 2月28日の議会演説でトランプ大統領が打ち上げた「インフラ投資1兆ドル」は、日本円換算で114兆円の巨額。日本政府の平成29年度当初予算案(一般会計)の97.5兆円よりも多く、NY市場の株価を押し上げるには十分な「実弾」である。「バイ・アメリカン」をかいくぐって、日本企業がその経済効果から恩恵をどれぐらい受けられるか、試算した結果が待たれる。(編集担当:寺尾淳)