再生医療のドナーとなっていいという人は60%弱も 好意的な社会意識

2017年03月10日 08:10

 2015年の再生医療関連諸法の施行以降、新たに再生医療等製品が薬事承認を取得するなど産業化に向けた動きは加速している。再生医療の中身に注目すると、患者自身の細胞を使う自家再生医療に比較し、あらかじめ準備可能な他人の細胞を用いた他家細胞製品が産業化の観点からは有利であると言われているが、他家細胞製品の承認件数は未だ1件にとどまっている。

 産業への波及効果を高めるためには他家細胞製品の実用化が課題となるが、そのためには原料となるヒト細胞の国内における安定的な供給体制が必須となる。安定的なヒト細胞供給を実現するための細胞提供者(ドナー)をいかに確保するのか、NTTデータ経営研究所はその道筋を検討するために再生医療や細胞の提供に関する現状の社会意識について、NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションが提供する「NTTコムリサーチ」登録モニターを対象に、「再生医療への細胞提供に関する社会意識調査」を実施した。

 それによると、再生医療のキーワードとしての認知度は80%であった。また、再生医療治療を選択する可能性は70%程度であった。再生医療を実施するための細胞を提供できる人は全体の60%弱であった。

 複数回献血した経験がある場合、献血した経験が無い回答者に比べ20%程度多くの回答者が再生医療治療を受けたいという回答が得られた。自分や家族が重病にかかった経験がある場合、無い場合に比べて20%程度多くの回答者が再生医療治療を受けたいという回答が得られた。身体の一部を保管している場合、ひとつも保管していない場合に比べて10%程度多くの回答者が再生医療治療を受けたいという回答が得られた。

 複数回の献血経験がある場合、献血経験が無い場合に比べて20%程度多くの回答者が細胞の提供が可能という回答が得られた。細胞が再生医療の治療目的の場合も、研究目的の場合も傾向は変わらなかった。重病にかかった経験がある場合、重病にかかった経験が無い場合に比べて20%程度多くの回答者が細胞提供が可能という回答が得られた。同様に治療目的の場合も、研究目的の場合も傾向は変わらなかった。身体の一部を保管している場合、全く保管していない場合に比べて10%程度多くの回答者が細胞提供が可能という回答が得られた。同様に治療目的の場合も、研究目的の場合も傾向は変わらなかった。

 細胞を提供する際の条件として、1)わざわざ医療機関などを訪問する必要があること、2)細胞を採取する際に侵襲性を伴うこと、3)採取した細胞が全て他人が使用してしまうことがどの程度細胞提供の意思決定に影響を及ぼすのか聞いたところ、採取にあたって1)わざわざ訪問をする必要があることが最も影響を及ぼすという回答が得られた。

 細胞を提供しない理由として、「使われ方などが不明であり、不安を感じる」が挙げられた。細胞の提供に際しては、病院または公的機関で責任を持って説明・採取・取扱することで、安心感が得られるという回答が得られた。(編集担当:慶尾六郎)