2018年3月卒業予定の新卒採用活動がスタートし、優秀な新卒社員の獲得に向けて、早くも企業間での競争が激しくなっているようだ。株式会社ディスコの調査によると、2018年3月卒業予定者の採用見込みは7年連続で「増加」傾向にあり、とくに「IT」「サービス業」で増加の割合が多くなっている。企業の採用意欲は依然として高く、学生優位の売り手市場は、まだ続きそうな見通しだ。
ところで、2017年採用分の状況はどうだったのだろう。株式会社リクルートキャリアの研究機関である就職みらい研究所がまとめた「就職白書2017」によると、2016年12月時点での2017年卒の採用数は、企業側にとって「計画通り」が34.5%で、「計画より若干多い」「計画よりかなり多い」を合わせた「採用数充足・計」は50.2%となり、前年より1.9ポイント増加したことが分かった。同月時点で就職が決まっていた学生の「就職・計」も87.7%と、前年よりも0.9ポイント増加している。しかしその一方で、就職先が確定している学生の入社予定企業への満足度は、前年よりも0.9ポイント減少という結果が報告されている。
必ずとは言い切れないが、「入社予定企業への満足度」が高い企業は、優秀な新卒社員も集まりやすくなるだろう。大手企業は比較的人気が高いが、売り手市場の今、学生は競合他社と比較、検討した上で、自分が働きたいと思う企業を選択する。学生が目指す業界に、その会社一社しかないような状況ででもない限り、大手といえども、よりどりみどりで独占できるとは限らない。将来の発展のために一人でも多くの優秀な人材を獲得しようと思えば、採用戦略は必要だ。
近年では、インターネットを利用して、自社の仕事や環境、求める人材のイメージなどをアピールする企業も増えている。例えば東急建設では、厚木南インターチェンジや東京メトロ銀座線「渋谷駅」の改修工事など、大手ゼネコンとして携わった巨大プロジェクトの数々を物語形式で紹介し、リアルな職場環境を臨場感たっぷりに伝えているのが印象的だ。また、精密機器、計測器、医療機器、航空機器の製造を行う島津製作所のサイトでは、グローバルや世界という言葉を多用したり、ノーベル化学賞を受賞した田中耕一氏のメッセージを掲載するなど、メーカーでありながら研究者に夢や希望を抱かせるような情報を発信している。さらに女性技術者の活躍も紹介することで、男女の差がなく長く働ける職場環境であることも紹介している。
女子学生に対する新卒戦略としては、住友理工も面白い試みを行っている。同社は近年、グローバル化を推進しているが、それと並行して女性の総合職採用を積極的に進めている。先日も、名古屋駅前のグローバル本社において、女子学生を対象にしたキャリア支援セミナー「女子のホンネ」を開催。午前と午後に行われた同イベントには29人の女子学生が参加した。女性限定のイベントなので、質問などもしやすく、疑問や不安も解消されたと、参加者からの評判も上々だったようだ。
これらの企業に共通しているのは、優秀な人材欲しさに理想ばかりを誇張するのではなく、自社の仕事と求める人材を的確に伝え、尚且つ、就職希望者の不安や疑問を解消しようという姿勢が見受けられる。「満足度」は、そういうところに現れるのかもしれない。(編集担当:藤原伊織)