物流も品質を求める時代に。輸送業界で注目されている「データロガ―」とは?

2017年03月18日 19:19

ローム0316

ラピスセミコンダクタが開発した32ビットマイクロコントローラ「ML630Q464/466」。データロガーに必要な主要機能と、温度・湿度・加速度などのデータ取得、データ表示、取得データのPDFファイル生成機能を業界で初めて1チップ化した製品だ。

 宅配業界最大手のヤマト運輸が今年9月をめどに配送料金を全面的に値上する方向で検討していることを3月7日に発表して以来、同業他社が追随する可能性も含め、個別配達だけでなく、運輸業界全体が揺れている。ヤマトの全面値上げが行われれば、消費税増税時を除けば実に27年ぶり。宅配業界を牽引してきたリーディングカンパニーの動きは、今後の日本経済に大きな波紋を呼びそうだ。

 とはいえ、いくら安くて早いといっても、配達や輸送が乱暴だと困るのも事実だ。配送の効率やコストダウンばかりを求めるあまり、商品管理がずさんになっては本末転倒。商品を安全確実に運んでくれるのであれば、多少の値上がりや不便さも享受すべきであろう。

 とくに近年は、食品や医薬品に対する安心、安全への要求が高まっている。中でも生鮮食品や医薬品などを生産・輸送・消費の過程の間で途切れることなく低温に保つ物流方式「コールドチェーン」の適用が拡大しており、輸送中の温度・湿度・衝撃へ配慮した輸送環境管理が求められている。

 そこで注目が高まっているのが、管理手段となるデータロガーだ。データロガーとは、センサにより計測・収集した輸送中の温度・湿度・衝撃などの環境情報を記録する機器である。年率10%以上の伸びで需要が増え続けると予想されており、電子機器メーカー各社がこぞって開発に乗り出している。

 例えば、キーエンスが発売しているデータロガー「NR600/500」シリーズは、従来の機器に比べ、配線の煩わしさなどに配慮したもので、7つの計測ユニットを本体一台に連結させることで個別にデータを収集していた手間を省き、経費節減にも貢献する。

 また、データロガーは荷物の中に設置されて使い捨てられる場合も多いため、長期間の輸送の場合も考慮し、バッテリーの小型化・部品点数の削減による小型化・低コスト化も求められている。

 そんな中3月14日、ロームグループのラピスセミコンダクタがこのようなデータロガーに最適なマイコンを開発し、量産を開始したと発表した。ラピスセミコンダクタの32ビットマイクロコントローラ「ML630Q464/466」は、データロガーに必要な主要機能(USB、高速動作用クロック発生機能、LCDドライバ、高精度RC発振型ADコンバータ)を内蔵し、温度・湿度・加速度などのデータ取得、データ表示、取得データのPDFファイル生成機能を業界で初めて1チップ化した製品だ。しかも、従来品の約3倍もの電池寿命という超低消費電力ながら、高ノイズ耐性に加え高性能を両立している。(コイン電池1個で約380日動作が可能)
 
 パソコンに本製品が内蔵されたUSB型のロガーを差すだけで、書き換え不能な記録データをPDFにて生成することを可能にしたことで、輸送時の環境を把握できるだけでなく、手間も省き、輸送データの改ざん防止など信頼性の向上にも貢献するという。

 たとえ輸送業者が値上げをしたとしても、今後もあらゆる業界の中で輸送の需要は拡大し続けていくだろう。その中では、安易な価格競争ではなく、輸送する荷物に対してより細密な管理ができているかということが、これからの社会では求められるのではないだろうか。
 
 データロガーのような製品の意義も、今後益々大きくなるだろう。(編集担当:藤原伊織)