トヨタと農研機構は、トヨタが開発したDNAマイクロアレイ技術をベースに、イチゴの遺伝情報を解析する技術開発に成功。イチゴの重要病害に強い個体、および季節を選ばずに育つ「四季成り性」を有する個体を選抜することができるDNAマーカーの開発に成功した
トヨタは、国立研究開発法人「農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)」と共同研究を行ない、DNAマーカーを用いたイチゴの品種改良を効率化する技術を開発した。
イチゴは、国内でもっとも市場規模の大きい園芸作物だ。が、国内では12月から翌年5月に生産が集中している。端境期の7月から10月の需要のほとんどは輸入に頼っている。そのため、病気に強く、この端境期に国内で生産、出荷できる魅力のある品種づくりが必要とされてきた。しかし、イチゴのゲノム構造が複雑で、遺伝情報の解析が難しく、DNAマーカーを用いた品種改良がなかなか進まなかった。
こうした状況のなか、トヨタと農研機構は、トヨタが独自に開発したDNAマイクロアレイ技術をベースに、イチゴの遺伝情報を高精度に解析する技術開発に成功。イチゴの重要病害である「うどん粉病」や「炭疽病」に強い個体、および季節を選ばずに育つ「四季成り性」を有する個体を選抜することができるDNAマーカーの開発に成功した。
イチゴの品種選抜は、有用な性質を持った2品種を交配して得られる種子から数千の子孫を育て、段階的に優良個体を絞り込んでいく。今回開発したDNAマーカーをイチゴの品種選抜に用いると、簡単なDNA検査で必要な遺伝子を持った子孫を判別できるため、評価の初期段階で候補を絞り込むことができる。これにより、病害抵抗性や四季成り性の選抜に要する期間を通常の2分の1に短縮でき、栽培面積も3分の1で済むなど、イチゴの品種改良の効率化に寄与すると考えている。
トヨタおよび農研機構は、これらの結果を本日開催されている日本育種学会で発表した。なお、今回発表したDNAマーカーは農業関係者に幅広く活用して貰うため積極的に情報開示・提供に応じていく考えだ。
トヨタは、2014年にトヨタ生産方式の考え方を農業に応用したクラウドサービス「豊作計画」を開発・提供するなど、自動車事業で培った生産管理手法や工程改善ノウハウを農業分野に応用してきた。また、愛知県の農業法人2社とトヨタの考える先端農業モデルの開発に向けた業務提携契約の締結についても発表している。
前述した先端農業モデルの開発に向けた業務提携契約とは、トヨタが愛知県の農業法人リイ・ファーム、鍋八農産と「先端農業モデル」の開発に向けた以下の述べるような業務提携である。
国内の農業は、農業従事者の高齢化に伴う急速な離農が進む一方で、農業法人の数は増加。一法人当たりの耕作規模が拡大するといった構造変化が進んでいる。なかでも米作においては、価格の低下や品質に対する消費者の要求レベルの向上など、業界を取り巻く環境が大きく変化している。従来の農業関連技術に留まらず、品質、環境、情報等の分野での先進・将来技術の活用や家族経営から組織経営への転換が求められているのが現状だ。
今回の提携では、トヨタが2012年から進めてきた「豊作計画」での取り組みを基本としながら、「ビッグデータと先進技術をつないだ精密農業」「流通、販売のプロセスの改善」「多品目への展開」の3つを備えた農業モデルを「先端農業モデル」として開発を進めていく。
トヨタは先進技術と農業をつなぐ開発を主に担い、リイ・ファーム、鍋八農産はモデル開発に向けた実践の場を提供し、モデルの運用、評価を担当。トヨタは、2社から現地現物で農業経営、農作業を学ぶことで、より実践的な技術開発や農業支援につなげる。
トヨタは今回の先端農業モデル開発に向けた取り組みを通じて、「豊作計画」の機能強化をさらに進めるとともに、農業分野での新たな商品・サービスを開発し、今後も農業の持続的成長に向けて、さらに貢献していきたいとしている。(編集担当:吉田恒)