9割の企業で残業が存在 8割の企業で残業削減に取り組んでいる

2017年03月13日 07:35

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現行の労働基準法は、原則として1日8時間、1週間に40時間の労働時間を定めている。これを超えて企業が従業員に残業を指示する場合、「36協定」を結んだ上で割増残業手当を支払う義務がある

政府が残業時間の上限規制を「月100時間」で検討し、「長時間労働」が大きな社会的テーマに浮上してる。東京商工リサーチでは、全国の企業を対象に「長時間労働」に関するアンケートを実施した。

 アンケート結果では、9割の企業で残業が存在し、8割の企業で残業削減に取り組んでいる。しかし、大企業に比べ中小企業等では受注や賃金の減少への影響が大きく、「長時間労働」削減に向けたハードルが高いことがわかった。

 現行の労働基準法は、原則として1日8時間、1週間に40時間の労働時間を定めている。これを超えて企業が従業員に残業を指示する場合、「36協定」を結んだ上で割増残業手当を支払う義務がある。だが、従業員の過労死やメンタル不調が社会問題化する中で、「実質的には無制限で残業ができ、36協定には何らかの上限規制が必要」(榊原定征経団連会長)と、労働基準法の見直し論議も出ている。政府も2月から本格的に長時間労働の是正に向け「働き方改革」を進めているが、「残業時間」の上限設定が中小企業等の経営にどう影響を及ぼすか注目される。

 残業の有無について、「恒常的にある」が7,095社(構成比57.3%)で6割近くを占めた。次いで、「時々ある」が4,504社(同36.4%)、「ない」と「させない」は764社(同6.1%)と1割未満にとどまった。

 「残業がある」は、全体の93.8%にのぼり、規模を問わずほとんどの企業で残業が行われている実態が浮き彫りになった。

 企業規模別では、大企業(2,898社)では「恒常的にある」が2,021社(構成比69.7%)、「時々ある」が825社(同28.4%)で、「残業がある」は2,846社(同98.2%)に及んだ。

 中小企業等(9,465社)は、「恒常的にある」が5,074社(構成比53.6%)、「時々ある」が3,679社(同38.8%)で、「残業がある」は8,753社(同92.4%)で、中小企業等の方が残業のある比率は5.8ポイント低かった。

 残業の理由は、トップが「取引先への納期や発注量に対応するため」が6,170(構成比37.6%)で約4割を占めた。次いで、「仕事量に対して人手が不足している」が4,058(同24.7%)、「仕事量に対して時間が不足している」が3,463(同21.1%)、「日常的なことなので特に理由はない」が1,213(同7.3%)、「不明」が68(同0.4%)の順。取引先との関係で避けがたい状態が浮き彫りとなった。

 「その他」では、「突発的な事態への対応」(人材派遣業)、「季節業務対応」(会計事務所)、「動物を扱う仕事のため」(酪農業)、「現場作業や顧客への対応のため」(建設業)など、自社都合では避けられない事情もある。

 また、「実質的に残業代が給料の一部になっている」(鍛造業)など、残業代が生活費に織り込まれているケースも見受けられ、賃金引上げとの兼ね合いに広がっているとしている。(編集担当:慶尾六郎)。