天文学を巡っては、米国の研究チームが重力波を初めて観測したとして「歴史的成果」と世界中で評価された。しかし、日本も頑張っている。宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、2月17日にX線観測衛星「アストロH」を搭載した「H2Aロケット」30号機を種子島宇宙センターから打ち上げる。当初、12日の予定だったが天候不良のため延期されていた。宇宙の成り立ちを調べ、宇宙に潜む物理現象を解明することを目的としている。
アストロHが行うX線観測による天文学は約50年前に始まった。宇宙で我々が観測できる物質の80%は、ほとんど可視光では見ることができず、X線でしか検出できない高温状態にあると考えられ、宇宙の全貌を知る上でX線観測は不可欠の手段とされている。
日本のX線天文学は世界でも定評があり、これまで5機の観測衛星を打ち上げてきた。今回のアストロHは前回の「すざく」(2005)よりも、撮像・分光では100倍の感度を実現したという
アストロHのミッションは大きく2つ。1つは宇宙の成り立ちを調べること。巨大ブラックホールはどのように成長し、周囲にどんな影響を与えたのか? 銀河団は暗黒物質の支配の下でどのように形成・進化してきたのか? 人間の体を作るような元素がどのように作られ、ばらまかれたか?
もう1つは極限状態での物理現象の検証。超高密度・超強磁場の極限状態ではどんな物理現象が起きているのか? ブラックホールの近くではどのくらい時空はゆがんでいるのか? などを調べる。
打上げ後は全世界から観測公募を受け付ける予定で、JAXAでは「大型公開X線天文台と位置づけられ、宇宙に潜む物理法則を知りたいという世界の研究者の熱い期待を背負っている。X線天文学の国際的な旗艦ミッション」とコメントしている。(編集担当:城西泰)