環境音楽を聴いたときの気分変化から疲れがわかる 理研が解明

2017年05月10日 07:14

画・イヤホンで自律神経や血圧調整機能など体の状態測定へ

理化学研究所らの共同研究グループは、環境音楽の聴取により主観的な疲労が軽減し、安心・リラックス感が増強すること及び、その際の自律神経機能指標の変化パターンが、疲労、癒し、眠気、憂鬱などの主観的気分の変化によって予測可能であることを明らかにした。

 音楽を聴くことで主観的な気分に影響(安心・リラックス、モチベーション増加、興奮など)を与えることは広く認識されており、音楽を聴くことで、気分が改善され疲労感が減ることも報告されている。しかし、音楽が与えるこうした影響について、生理学的な観点での科学的なコンセンサスは得られていなかった。一方で、疲労の度合に関して、慢性的、肉体的、精神的、その複合型の疲労などさまざまなものがあること及び、主観的な疲労感と必ずしも一致しないこともあり、客観的な疲労・疲労感の指標と主観的な気分変化との関係性は解明されていなかった。このほど、理化学研究所らの共同研究グループは、環境音楽の聴取により主観的な疲労が軽減し、安心・リラックス感が増強すること及び、その際の自律神経機能指標の変化パターンが、疲労、癒し、眠気、憂鬱などの主観的気分の変化によって予測可能であることを明らかにした。

 同研究グループは、ピアノ、バイオリン、自然音源などから構成される環境音楽のアルバム楽曲を使用して、健常成人を対象に、環境音楽を30分間聴いたときと無音で過ごしたときの、主観的な気分と自律神経機能の変化について計測した。気分をタッチパネルなどで簡便に入力できる「KOKOROスケール」を用いて得た主観的気分データの解析結果から、環境音楽の聴取により、気分が「癒し」「眠気」「安心・リラックス感」の方向に大きく動くことが分かった。さらには、聴取前後での自律神経機能の変化と主観的な気分変化との相関を調べたところ、「癒し」や「安心・リラックス」への気分変化に対しては心拍数が減少すること、「爽快」への気分変化に対しては循環器系自律神経機能の指標である心拍変動比(低周波数成分と高周波数成分の比)が減少することが判明した。研究結果からは、音楽聴取時の主観的な気分変化をモニタリングすることで、聴取者の自律神経活動のバランスを予測することが可能なことを示す。

 今年1月には大阪大学らが、AI(人工知能)により脳波を分析し気分を改善させる音楽をリアルタイムで作曲するシステムを発表するなど、音楽の自律神経機能調節を目的とした活用が広がっている。今回の研究を応用することで、自律神経機能を調節するような楽曲制作・選曲システムの開発が期待される。(編集担当:久保田雄城)