IoT時代に向けてAI技術者の大増員を図るパナソニック

2017年05月10日 07:08

 パナソニック<6752>は4月に研究開発(R&D)戦略説明会を開き、2020年に向けた技術ビジョンとして「エネルギー領域(蓄電・水素)」と「IoT/ロボティクス領域」を掲げた。

 とくに「IoT/ロボティクス領域」はパナソニックが提供しているさまざまな機器がIoT時代において何らかの影響を受けることから人工知能(AI)技術がさらに必要になるため、AIに詳しい技術者を21年度末までに現在の10倍に相当する1,000人規模に増やす予定。

 「IoT/ロボティクス領域」はAIロボティクス家電や店舗・接客ソリューション、自動運転/コミュータなどの分野で展開する。たとえばスマート家電ではすでにロボット掃除機「RULO」を販売しているが、高度なセンサーとAIを取り付けて掃除技術の向上を目指す。

 自動運転にもAIは欠かせない。パナソニックは小型電気自動車を試作、一般公道に近い本社構内で試験走行を実施しており、停車中の車を避けて走行する他、GPSの届かない地下などのエリアでも自律的に走行する実績を上げている。

 今後はAIに学習を繰り返して理解を深めるディープラーニング(深層学習)の仕組みを取り入れ、20年度中には完全自動運転システムを完成させる予定。

 これらの戦略を実現する上で課題となるのがAI技術者の人材不足だ。

 この課題を解決するために大阪大学と共同講座を開催、学生と社内技術者を対象に人材育成を図る。新卒採用にはAI特別枠を設け、すでに17年度入社組の1期生が誕生した。

 社内育成の強化だけでなく外部人材も積極的に取り入れる方向で動いており、すでにAI分野で実績のある現職大学教員を兼業社員として採用している。3年後には現状の2?3倍規模となる専門家を育て、その300人が核となって5年以内に1,000人規模まで増やす方針だ。

 AI技術者の需要はパナソニックだけでなく、世界中の電機や自動車メーカーが必要としている。少ない人材をめぐって争奪戦が激化する可能性が高まっている。(編集担当:久保田雄城)