経営再建中の船井電機<6839>はエンジニア出身の船越秀明取締役執行役員が代表取締役社長に昇格し、前田哲宏社長が取締役に退くとの人事を発表。昨年6月に社長に就任した前田氏は、約1年での社長退任となる。船井電機の社長交代は約3年半で4度目となり、同社の経営再建の困難さを表す結果となっている。
船井電機は営業利益ベースで、2012年3月期より5期連続での赤字が継続。2016年3月期は当期純利益にて338億円もの赤字を計上している。また2017年3月期も営業利益・当期純利益ともに69億円の赤字の予想を発表しており、6期連続営業赤字の可能性が高くなっている。
船井電機はウォルマート等の有力量販店との緊密な関係を通じ、主にアメリカ向けのテレビやDVDレコーダー販売で急成長を果たしており、売上の約8割が北米向けとなっている。同社は今も北米で販売シェアトップの日系テレビメーカーとして地位を維持。しかしながら中国勢の台頭を背景とするデジタル家電の低価格化の波は、同社の経営にも大きな影響を与えている。相次ぐ社長交代により経営の立て直しを図るも再建を果たせず、現在に至るまで苦戦が続いている。
ただし昨年10月にはヤマダ電機<9831>と、船井電機のFUNAIブランドの液晶テレビ、ブルーレイ製品の独占販売について基本合意契約を締結。過去に国内販売から撤退しているFUNAIブランド製品について、2017年からヤマダ電機において販売を予定している。ヤマダ電機との提携が、今後の経営再建の鍵を握っている。
強固な財務体質を有する同社は、2016年度の第3四半期時点においても自己資本比率64.1%を誇っており、経営再建に向け時間的余裕をまだ有している。ヤマダ電機との提携をテコに経営再建を図る考えの同社であるが、今回の社長交代を契機に経営再建を軌道に乗せることができるのか、主力のディスプレイ事業及びDVD事業に長く携わってきた、船越新社長の経営手腕が問われることになりそうだ。(編集担当:久保田雄城)