加速する少子化社会の中で注目される、体験参加型授業

2017年05月14日 12:11

 厚生労働省が昨年12月に発表した人口動態統計の年間推計によると、2016年に生まれた子どもの数が、動態統計を取り始めた1899年以降で初めて100万人を割り、98万1000人だったことがわかった。前年よりもさらに2万人以上減少しており、少子化がさらに深刻化していることは明らだ。また、初婚年齢の上昇や20代から30代女性の人口が減少していることなどから考えても、今後も出生率の低下は進行してしまうと予測されている。

 少子化が社会に及ぼす影響は様々だ。まず、労働力人口の減少は、今後の日本の経済成長率を鈍化させる可能性がある。また、高齢化が伴うことで社会保障費の負担が増大し、国民の生活水準に大きな影響を及ぼす。さらに問題なのが、子どもの教育だ。受験戦争の緩和などプラス面の影響も考えられるものの、子ども同士の交流の機会が減少したり、過保護になる傾向がみられる。勉強面では密度の高い教育が受けられても、社会性や精神面においては、豊かで健やかな成長への影響も懸念される。
 
 そこで注目されているのが、学校や企業、団体などが実施している参加体験型の授業だ。

 例えば、京都府向日市の第2向陽小学校では、地域在住の友禅職人や竹細工職人など、その道の達人を生徒が探し出し、弟子入り体験をするというユニークな授業を行っている。

 職人の気質や本物の技の素晴らしさにふれるとともに、社会における人とのつながりの大切さや勤労を尊ぶ態度、人と関わる力を育て「生き方を考える」体験をすることがねらい。伝統文化や職人が多く住まう京都の土地柄も活かした教育といえるだろう。

 パナソニックは、小中高校にプロ用の撮影機材や制作ノウハウを提供し、子どもたち自らが、自由な発想で映像制作に取り組む映像制作支援プログラム「キッド・ウィットネス・ニュース(KWN)」という取り組みを行っている。KWNは1989年にアメリカでスタートして以来、2016年3月現在、世界19ヶ国と地域で年間約1万人以上の子どもが参加している巨大プロジェクトだ。日本でも2003年から活動を展開されており、子どもたちは「環境」か「コミュニケーション」「スポーツ」の中からテーマを選んで、自分たちの手でビデオ制作活動行う。その中で、環境問題など社会が抱える課題に対しての関心を高めたり、創造性やコミュニケーション能力、チームワークを養うことが主な目的だ。世界的に展開されているプログラムなので、海外の参加校とも交流することができ、グローバルな精神を育成することにも役立っているという。YouTubeなどの影響もあって、子どもたちも映像への関心が高く、デジタル世代にはもってこいの教育プログラムといえそうだ。

 一方で、木造注文住宅を手がける株式会社アキュラホームとグループ会社のオカザキホームが実施している「木望(きぼう)の未来プロジェクト」が面白い。

 同プロジェクトは、次代を担う子どもたちに「森のすごさ」「木の素晴らしさ」「物づくりの楽しさ」の理解を深めてもらうことを目的に実施されているもので、間伐材を加工し製作した小学校学習机の天板を寄贈し、交換を行うほか、多くの小学校では出張授業「ふれあい授業」を行って、講演やカンナがけ体験などを通じて森林の大切さなど自然環境を学び、木材に直接触れることで木の温もりを知る機会を提供している。

 英語や数学といった勉強ももちろん大事だが、子どもの頃の体験は大人が思う以上に貴重なものだ。たった一日、たった一つの体験が、子どもたちの大きな興味を呼び起こす起爆剤になることもある。明日の日本を担う人材も、そういう教育から生まれてくるのではないだろうか。(編集担当:藤原伊織)