少子化問題を考えるにあたり、合計特殊出生率は重要な統計数値データである。5 月に厚生労働省は『平成 27 年人口動態統計月報年計(概数)の概況』で2015年の合計特殊出生率の速報値を公表した。今後、厚生労働省は先日総務省より公表された平成27年国勢調査の結果を受け、年内に合計特殊出生率の確定値を公表することとなっている。
この都道府県別合計特殊出生率の分母の女性人口に用いる資料は、速報値では日本人のほか外国人も含む女性人口(総務省『人口推計』)だったが、確定値では国勢調査結果に基づく日本人だけの女性人口となるため、速報値に含まれていた外国人人口の影響や総務省『人口推計』の推計の誤差の影響により、都道府県によっては数値が大きく変わるという。
そこで、東北大学大学院経済学研究科 高齢経済社会研究センターの吉田浩教授らは、厚生労働省による確定値の公表に先立ち、厚生労働省の確定値の算出定義を用い平成27年都道府県別合計特殊出生率の確定値を試算した。
その結果、速報値では分母に含まれていた外国人人口が除外されたことの影響などにより、確定値では25都道府県で出生率が上方に修正される結果となった。特に、東京都では1.17から1.25に上昇(+0.08)、京都府では1.26から1.34 に上昇(+0.08)、岐阜県と愛知県ではともに1.49から1.56に上昇(+0.07)、宮城県では1.31から1.37に上昇(+0.06)となるなど、大きく修正される結果となった。
一方、総務省『人口推計』の推計誤差の影響により、17 県では下方に修正される結果となった。さらに、都道府県ごとの順位も大きく入れ替わり、速報値では第8位となっていた鹿児島県は順位が5位上がり第3位、ともに第16位となっていた滋賀県と広島県はともに5位上がり第11位、ともに第27位となっていた岐阜県と愛知県はともに10位上がり第17位、第14位となっていた和歌山県は9位下がり第23位、第24位となっていた山形県は9位下がり第33位、第38位となっていた秋田県は6位下がり第44位などとなったという。(編集担当:慶尾六郎)