認知症高齢者は年々増加し、2015年時点で約500万人、2025年には約700万人に増加すると推計されており、日常生活の金銭管理にも支援を必要とする人が今後増加してくると考えられる。認知症の人の預貯金・財産の管理に対する社会的な支援としては、成年後見制度や日常生活自立支援事業などの仕組みが整えられているものの、必要と推定される人数に対して利用者は少なく、現状では家族・親族が支えていることが多いと考えられる。しかし、これまで家族・親族による預貯金・財産管理の実態はあまり明らかにされてこなかった。
みずほ情報総研は、認知症の人に対する預貯金・財産の管理を支援したことがある40歳以上の男女(2,000名)を対象に「認知症の人に対する家族等による預貯金・財産の管理支援に関する調査」を実施した。
家族・親族が預貯金・財産の管理を支援することになった理由として「ATMの操作・利用が難しくなった」が最も多く48.5%、次いで「お金の計算が難しくなった」46.1%、「窓口での説明の理解が難しくなった」42.5%であった。
預貯金・財産の管理支援の方法は「ATMによる預貯金の管理(本人の代理として実施(本人は不在))」が59.8%。組み合せ別では、「ATM(代理)のみ」が21.7%で最多、次いで「ATM(代理)と窓口(代理)」が19.2%だった。
預貯金・財産の管理支援の内容は「50万円未満の預貯金の引き出し」76.9%が最多。「資産運用の手続き」、「相続の相談・手続き」など、金額が大きく、本人への影響が大きいと考えられる支援も1割前後の支援者が経験している。
「成年後見制度を利用している」はわずか6.4%、「成年後見制度のことは知っているが利用するつもりはない」との回答が55.4%。日常生活自立度のランクIV(常に目を離すことができない状態)・ランクM(専門医療を必要とする状態)で成年後見制度を「利用している」割合が高まるが、「利用している」と「利用を検討している」の合計割合は常にほぼ一定である。
預貯金・財産の管理を支援する上で「とても負担を感じる」と回答した者の割合が高かったのは「本人にわかるように説明すること」22.5%、「本人の同意や直筆の委任状を得ること」20.2%であった。
預貯金・財産の管理について「本人にわかるように説明すること」に「とても負担を感じる」と回答した者の割合は、本人の考え方や希望を「ほぼ把握できている」場合の20.7%に対し、「把握できていない」場合は40.5%。本人の考え方や希望を把握できていないと感じる者ほど負担を感じている傾向がみられる。
預貯金・財産の管理に対する本人の考え方や希望を「ほぼ把握できている」と回答した者の中では「負担は感じない」割合が44.0%となっていた。
預貯金・財産の管理を支援する上で難しさを感じた際に相談できる相手として、専門職では「ケアマネジャー・地域包括支援センター職員など介護の専門職」や「金融機関の職員」と回答した割合が、相談者の約3割にのぼった。「弁護士・司法書士など法律の専門職」への相談は相談者の1割に留まっていた。一方で「相談できる相手はいなかった」者も9.5%いた。(編集担当:慶尾六郎)