刑務所というと、薄暗い鉄格子の部屋が並んでおり、厳しい刑務官が睨みをきかせ、刑務作業をする工場や面会に行くときなども刑務官がつきっきりで同行するというイメージがあるかもしれない。しかし、そんな刑務所事情も変わってきそうだ。
山口県美祢市にある「美祢社会復帰促進センター」は2007年に国内で初めて設立された官民協働の刑務所で、運営の一部を民間企業が担当。民間事業者のノウハウやアイデアを活用して、より効率的で効果的な矯正処遇を行うことを目的に作られた。収容対象は初めて刑罰を受ける「初犯者」のうち、心身などに著しい障害がなく、集団生活に順応できると思われる者とされている。
受刑者が暮らす居室は窓があって明るく、ベッドや机、椅子そしてテレビまでもが用意されていて、刑務所というよりはビジネスホテルの一室というような印象だ。
施設には公務員である刑務官のほかに、大手警備会社であるセコムが受刑者の管理や警備を担当。施設内にはセンサーやCCDカメラが配置され、受刑者や刑務官、職員、来訪者など、設備内にいる全員に無線タグが入ったカードを装備させ、位置情報をリアルタイムで把握。受刑者が移動すると目的地までのドアを遠隔操作で開けることができ、従来のように刑務官が付き添うことはない。
食事は社員食堂などの運営や病院、学校などの給食の提供を行っているエームサービスが担当。栄養のバランスを考えた食事を受刑者に出している。また、食事の配膳はロボットを使って自動で行われる。
教育は小学館集英社プロダクションが担当。従来の作業や職業訓練に加え、臨床心理学の専門家による処遇調査を行った上、受刑者に適した改善指導を行い、勤労意欲や就労能力を向上させる事で再犯を防ぐ。
国内には他にも栃木県に「喜連川社会復帰促進センター」、兵庫県に「播磨社会復帰促進センター」、島根県に「島根あさひ社会復帰促進センター」があり、こうした官民協働の刑務所は4ヶ所ある。犯罪者の再犯率が問題となっている中、民間のノウハウを活かした社会復帰支援によって、再犯率の低下が期待される。(編集担当:久保田雄城)