4月に賃上げを実施した企業は約8割 中でも中小企業ほど賃上げに取り組んでいる実態が浮き彫りに

2017年06月18日 16:24

 東京商工リサーチによると、2017年4月に賃上げを実施した企業は約8割(構成比82.6%)にのぼった。中でも中小企業ほど、「従業員の定着」など人材流出を防ぐための賃上げに取り組んでいる実態が浮き彫りになった。

 「従業員の定着」が目的の賃上げは、資本金1億円以上の大企業が46.6%、同1億円未満の中小企業が53.8%で、中小企業が7.2ポイント上回った 。ただ、賃上げの効果は「社員のモチベーションが上がった」が55.0%でトップだったが、「効果なし」も21.7%あった。

 効果がなくても今後も賃上げを行う企業は68.3%あっ た。大手との収益格差が広がるなか、賃上げと人材確保、収益負担の板挟みで苦慮する中小企業の悩みがにじみ出ているとしている。

 Q1.今年度、賃上げを実施しましたか?(択一回答)

 実施は82.6%(有効回答5,913社中4,890社)と、約8割を占めた。実施の内訳は、「定期昇給のみ」が29.6%(1,752社)がトップ。次いで「定期昇給 +ベースアップ」が15.5%、「定期昇給+賞与増額」が14.0%の順。資本金別では、1億円以上では86.6%(872社中755社)が何らかの賃上げを実施したが、1億円未満では82.0 %(5,041社中4,135社)と、4.6ポイントの差があった。定期昇給を実施した企業は、1億円以上では75.9%(872社中662社)に対し、1億円未満は64.6%(5,041社中3,257社)にとどまった。

 Q2-1.「Q1で定期昇給を実施と回答した方にお聞きします」定期昇給の上げ幅(月額)はいくらですか? 最多は、「5,000円以上1万円未満」が27.3%(有効回答2,832社中774社)で約3割を占めた。平均値は5,774円、中央値は3,050円だった。資本金1億円以上では、「5,000円以上」が半数に近い同44.6%(480社中214社)だった一方、1億円未満は「5,000円以上」が33.7%(2,352社中792社)にとどまり、規模により定期昇給の上げ幅が異なった。

 Q2-2.「Q1でベースアップを実施と回答した方にお聞きします」ベースアップの上げ幅(月額)はいくらですか?最多は、「5,000円以上10,000円未満」が21.0%(有効回答1,619社中340社)。平均値は6,679円、中央値は3,000円だった。

 Q2-3.「Q1で賞与の増額を実施と回答した方にお聞きします」賞与(一時金)の上げ幅(年間)はいくらですか?(択一回答)「30万円未満」が75.9%(有効回答1,301社中988社)と7割以上を占めた。資本金別では、1億円以上は「30万円未満」が84.2%、1億円未満は「30万円 未満」が同74.8%と9.4ポイント開き、大企業ほど上げ幅が少なかった。これは元々、大企業の賞与水準が高く、中小企業が賞与水準のアップに力を注いだ結果とみられる。

 Q3.「Q1で賃上げ実施と回答した方にお聞きします」賃上げした理由は何ですか?(択一回答)「従業員を定着させるため」が、52.8%(有効回答3,490社中1,843社)で過半数を占めた。資本金別では、1億円以上は「従業員を定着させるため」が 46.7%(469社中219社)に対し、1億円未満は「従業員を定着させるため」が53.8%(3,021社中1,624社)と過半数を占め、7.1ポイントの開きが出た。中小企業ほど賃上げで従業員の定 着を促していることがうかがえるとしている。

 Q6.「Q1.で賃上げを実施したと回答した方にお聞きします」実施の結果、どのような効果がありましたか?(択一回答)最多は「従業員のモチベーションが上がった」が55.0%(有効回答3,490社中1,920社)と過半数を占めた。ただ、「効果なし」も同21.8%(759社)あり、賃上げでも約2割の企業は厳しい結果になった。(編集担当:慶尾六郎)