カジノを中心とした統合型リゾート施設(IR)でのギャンブル依存症対策として、日本人利用客には入場時にマイナンバーカードの提示を求め、入場の可否を判断する仕組みの検討を行うこととなった。政府がIRの運営基準を検討する有識者会議に依存症対策として提示した。また同時に、IR施設の区域外ではカジノに関する看板やポスターなどの広告を原則禁止する等の広告規制も提示された。
IR整備については、ギャンブル依存症に対する懸念が広がっている。厚生労働省が17年3月に発表の調査では、都市圏の成人の2.7%が既にギャンブル依存が疑われる状態になっていることが、明らかになっている。
政府は今秋の臨時国会でIR実施法案を提出予定であるが、有識者会議の議論を踏まえてギャンブル依存症対策を法案に盛り込む方針である。
海外の例からも、カジノ解禁に際してはギャンブル依存症対策が必要不可欠となる。しかしながら過剰な規制を加えれば、カジノ入場者数が伸びない可能性もあるため、その匙加減は非常に難しい問題となる。今回の政府提案通りに、実際カジノ入場にマイナンバーカードの提示が必要となった場合は、3月時点でマイナンバーカードの普及率が8%となっており、カジノに行くためには事前にマイナンバーカードの取得が必要となるため、カジノには日本人客は殆ど来場しない可能性も有している。有識者会議では、既にマイナンバーの普及率から、本制限策について疑問の声も上がっている。
経済の活性化、という観点ではカジノ解禁が一定の経済効果が生じると考えられるが、ギャンブル依存症対策がおざなりであれば、最終的な経済効果も相殺されてしまう可能性がある。政府ではカジノ解禁の方向で調整が進んでいるが、実効性のあるギャンブル依存症対策に加え、ギャンブル依存症対策がカジノ活性化の妨げとならぬよう、今後難しい舵取りが迫られる。マイナンバー活用の有効性の議論も含め、今後カジノ解禁にともないギャンブル依存症対策がどのような内容となるか、注目を浴びることになりそうだ。(編集担当:久保田雄城)