1990年代以降、アルコール飲料の消費漸減傾向が言われて久しい。が、ここにきて、プレミアムな価格帯の製品をプッシュする動きが顕著になってきている。先般、ホワイトスピリッツの代表である「ジン」で、サントリーとアサヒビールが相次いで1本(700ml)4000円超の高価な製品を発表して話題となった。
ブラウンスピリッツの代表であるウイスキーも例外ではない。ウイスキーは、数年前から日本でもハイボール人気やNHKの朝のテレビ小説「マッサン」などの影響で活況となった。現在、各メーカーによると、ブームと呼ばれた騒ぎが一段落し、“ウイスキーファン”と言われるアルコール飲料のメインにウイスキーを据える愛飲者も確実に増え、定着したという。
そこで酒類メーカーが着目したのがプレミアムウイスキーだ。先日、アメリカンウイスキー、バーボンのプレミアムクラスを代表する「ウッドフォード・リザーブ」のセミナーでアルコール飲料の市場調査会社「IWSR」の数字が紹介された。それによると、世界のアメリカンウイスキーの売上は2000年以降堅調に推移しており、2015年に2010年比で10%以上の伸長だという。なかでも、1本50ドル超のプレミアムバーボンは26%以上の伸びを示している。
同じようなことは、日本のウイスキーでも起きており、高価格帯のサントリーのシングルモルト「山崎」「白州」やニッカウヰスキーのシングルモルト「余市」「宮城峡」は完全に品薄状態が続いている。
その間隙をチャンスとみて日本市場にスコッチやバーボンなどのプレミアム製品が殺到しそうなのだ。前述したプレミアムバーボンの「ウッドフォード・リザーブ」はスタンダードボトルでも1本数千円と高価だが、今回1本1万円超となる「Double Oaked」を導入した。
英国の最大輸出産業でもあるスコッチ陣営も負けていない。なかでも個性的なスコッチといわれるアイラモルトのなかで、もっともピーティとされる「アードベック」は、「アードベッグ・ケルピー」を限定発売した。“ケルピー”とは、アードベッグ蒸留所近辺に住み着いているというスコットランドの伝説の海の精の名で、アイラ島のプレミアムなシングルモルトに相応しい名称だと紹介された。
そして、シングルモルトの最大の生産地であるスペイサイドからも新製品が届いた。1840年創業で、世界8位のスコッチウイスキー生産を誇るグレングラント蒸溜所が満を持して発売した「グレングラント18年」だ。取り扱うアサヒビールによると、国内のスコッチウイスキーの売上規模は、昨年で約1671億円とされ、堅調だという。グレングラントは、既存の3ブランド「Major’s Reserve」「10年」「12年」に加えて「18年」をラインアップしてプレミアムスコッチ市場に参入する。
シングルモルト「18年」は、バーボンカスク貯蔵原酒だけをバッティングしたモルトウイスキーで、長期熟成モルトの割に、香りはフローラルでありフレッシュな味わいのウイスキー。ウイスキー評論家の土屋守氏は、「和食、鰻の白焼きなどとのマリアージュも試したい」としたモルトウイスキーだ。アルコール度数43%、予想市場価格は1万5000円(700ml)ほど。(編集担当:吉田恒)