富士経済は、臨床検査市場を構成する検査分野うち、病気の原因となる細菌を検出する細菌検査、ウイルスや細菌などのDNAなどを検出する遺伝子検査、採取した臓器や組織、細胞などを顕微鏡下で診断する病理検査の国内市場を調査した。
細菌検査市場は、培地による微生物培養検査、装置による同定・感受性検査、血液培養検査に大別され、装置による検査の伸びが堅調であることから拡大している。そのほか微生物培養検査ではコストパフォーマンスの高さから分画培地が依然として伸びている。装置による血液培養検査は、検査精度の向上のため血液を2カ所から採血し、好気・嫌気性菌の2セット培養が浸透してきていることもあり、順調に伸びている。
微生物培養検査では培地価格の低下が続いているが、保険点数が上がる検査項目もあるほか、培地価格は下げ止まりの兆しがみられる。また、分画培地も続伸が期待されることから、細菌検査市場は微増が予想される。
遺伝子検査市場は肝炎、結核、STD(性感染症)など、主に感染症関連の検査項目で構成される。市場規模が最も大きいのは結核菌であるが、2015年、2016年は大きく伸びたC型肝炎ウイルスの検査項目であるHCV定量がその規模を上回った。C型肝炎に非常に高い治療効果が期待できる新薬が登場し、これまでの治療薬では効果が見られなかった患者を中心に治療が集中したことで、検査需要も大きく拡大した。ただ、需要拡大はこの2年間のみであり、以降は以前と同程度の市場規模に戻り、2017年には検査需要が安定している結核菌が再び最大規模になるとみられる。ほかにはクラミジア+淋菌(クラミジア、淋菌の同時測定)が定着してきており、ヒトパピローマウイルス(子宮頸がんの原因ウイルスになると考えられているウイルス)の検査項目であるHPVも堅調な伸びを示している。
今後も市場規模の大きい結核菌やSTD関連の検査需要拡大が続き、遺伝子検査市場は微増が予想される。結核患者は微減が予想されるが、検査需要は依然として安定的にあるとみられる。STD関連はクラミジア、淋菌のほか、HPVも検診の普及に伴い検査需要が拡大すると考えられる。このほか、POCタイプの装置の開発が進められているが、登場すると遺伝子検査市場の拡大に繋がる可能性がある。
病理検査市場は、がん患者の増加や低侵襲な検体採取方法の普及、自動化ニーズを背景としたセミオート、フルオート装置の普及、また、がんの分子標的治療における薬剤投与検討のための検査の普及により、年率5~10%程度の拡大をしてきた。
今後、検査数の伸びは自動化の一巡にともない鈍化するが、新たな分子標的治療薬の登場は病理検査市場の拡大に寄与するとみられる。著効が期待される新たな分子標的治療薬は高薬価であるほど無駄な投与を回避する必要があり、薬剤選択の可否を判定する検査が重要になってくるため、コンパニオンダイアグノスティックスやそれに近い検査と対になって登場する可能性が高い。薬剤によっては対象患者が少ないが、検査単価が高いため病理検査市場を押し上げるとみられる。(編集担当:慶尾六郎)