経営再建中の東芝<6502>はスイスの子会社で電力計を開発のランディス・ギアのスシス証券取引所への上場計画を発表した。9月末までを目処に上場を計画するとしている。
既にランディス・ギアについては上場(IPO)だけでなくM&Aでの売却も含め、売却について様々な選択肢が検討されていたが、今回は改めてIPOを計画するとの発表となっている。
2017年3月期末時点で債務超過に陥っている東芝は、上場廃止回避のためには当期中の債務超過解消が必要不可欠となっている。半導体メモリー事業の売却によって、債務超過解消を目指しているが、既存提携先のウェスタン・デジタル(WD)から訴訟を提起される等、売却手続きが順調に進んでいるとは言い難い状況である。
ランディス・ギアは11年に東芝が産業革新機構と共同で約23億ドルで買収しており、出資比率は東芝6割・革新機構4割となっている。東芝の経営危機に伴い、ランディス・ギアについては当初M&Aでの売却の方向で各ファンド等と交渉が進められたが、現段階に至るまで合意には至っていない。
今回の東芝によるランディス・ギアのIPO表明により、今後同社はIPOに向け手続きが進むと考えられるが、課題はIPO時の株価である。東芝及び革新機構が約23億ドルで買収している同社であるが、ランディス・ギアは買収時に既に電力計企業として事業を確立していた段階であり、仮にIPOがなされたとしても、東芝は莫大なキャピタルゲインを得られる状態ではない。
原発事業による巨額損失によって、東芝は債務超過に陥っており、上場維持のために債務超過解消は待った無しの状況である。ランディス・ギアのIPOが債務超過解消の切り札とはなりえる訳ではないが、半導体メモリー事業の売却が難航の中、東芝が自主的に債務超過解消のために取れる数少ない選択肢とは言える。9月までに実際にIPOがなされるのか、それとも全株式の売却が容易なM&Aでの着地となるのか、今後その売却金額とともに注目を浴びることになりそうだ。(編集担当:久保田雄城)