富士フィルムHD<4901>が連結子会社の不適切な会計処理で375億円の損失計上を発表した。これまで発覚していた子会社・富士ゼロックスのニュージーランド販売子会社の損失額約220億円に加えて、今回新たにオーストラリアの販売子会社においても不適切な会計処理が判明し、合計損失額が375億円にまで増加することになっている。
富士フィルムHDは写真フィルム市場の消滅後、事業多角化で生き残りを図り成功した、事業多角化の優等生とされている。今回不適切な会計処理が発覚した富士ゼロックスは、富士フィルムとアメリカのゼロックス社の合弁会社であったが、2001年に富士フィルムがゼロックス社の持ち分の一部を買い取り子会社化したという経緯がある。よって富士ゼロックスは元来からの富士フィルムの子会社ではなく、親会社・富士フィルムのガバナンスが行き届いていなかった、という面が存在している。
今回の不適切会計問題を契機に、富士ゼロックスの会長以下4人の取締役の退任が決定。更に富士フィルムから合計7名の役員を派遣することも決定しており、富士ゼロックスに対するガバナンス強化が予定されている。
リコー<7752>のリストラ等、複合機市場はピークアウトしつつある中、複合機各社は今後の事業展開の柱を新規事業に据えている。複合機の世界的大手である富士ゼロックスは、富士フィルムHD内で独特の存在感を有していたが、今後は市場のピークアウトに加え、親会社からの監視が強くなることになる。
東芝に代表されるように、海外子会社に対するガバナンスが甘く、親会社の決算に影響が生じる例が生じているが、富士ゼロックスの場合は、海外子会社の問題と言うより有力子会社に対するガバナンス、という面が問題となっている。
富士フィルムHDの収益の3分の1以上を稼ぎ出している富士ゼロックスであるが、今後もこれまで通りの収益を上げることができるのか。7名の役員を派遣しガバナンスの強化を行う、富士フィルムの手綱さばきに注目が集まることになりそうだ。(編集担当:久保田雄城)